年金は受け取り繰り下げで増額、自分に合う資産運用を 現役時代から家計収支の見直し必要
厚生労働省が公表した財政検証結果では、公的年金の財政状況がおおむね改善傾向にあることが示されたが、それでも安心して老後の生活を送れるのかという不安を持つ人は多い。賢く老後に備えるための秘訣(ひけつ)を、年金・社会保障問題に詳しいファイナンシャルプランナーの井戸美枝さんに聞いた。 【グラフで見る】老齢年金の月額分布の変化(生年度別) 「年金はできるだけ多く受け取り、自分が働けなくなっても、お金が働いて生活できる仕組みを作ることが大切だ」。井戸さんはこう訴える。 年金は原則65歳から受け取れるが、健康で仕事を持ち、十分な収入があれば焦って受け取る必要はない。75歳まで受け取りを繰り下げることが可能だ。 1カ月繰り下げるごとに年金は0・7%ずつ上乗せされ、75歳の時点で増額率は84%に上る。仮に65歳から月額20万円の年金をもらえる予定だった人が75歳まで受け取りを先送りすると受給額は月額36万8千円まで膨らみ、お得というわけだ。 井戸さんは「年金の受け取りを繰り下げている間に、老後に備えて自分に合った資産運用でお金を作れるようにすればいい」と語る。 資産運用の方法は株式投資から貯蓄型保険までさまざまだが、損をしてしまっては元も子もない。井戸さんが「特にリスクが大きい」と指摘するのが不動産投資だ。 購入した不動産物件を貸し出すことで家賃を利益収入としたり、売却することで利益を得たりする投資だが、井戸さんは「管理費がかかるうえに、入居者が入らない可能性もある」と警告する。 老後資金を築くためには、現役時代からお金の使い方に気をつけることも欠かせない。家族構成や会社での立場の変化などによって左右される家計収支について、井戸さんは「5~10年ごとに見直し、お金を使う癖を変える必要がある」と指摘する。 「収入が増えれば、支出も増える傾向にある。たとえばゴルフに行くのに見えを張って高級車に乗る必要があるかなど、必要なものと不要なものを割り出すことが重要だ」と話す。