「嘘でしょ…」健診も全身がん検査もクリアした女性が「線虫検査」で「大腸ポリープ」この真贋はいかに?
従来の検査で「未病」は検証できない
新しい検査方法がどれだけ正確で、安全で、実際に使えるかをしっかりと見極めることの大切さは、誰も否定しない。だからこそ、見極めるための検証は、「科学的に」行われなくてはならない。しかしそれは、多くの国民や医師が思っている以上に困難だ。 たとえば前出の勝俣医師は「実際のがん患者さんと、がんでない方の尿を使って、ブラインドで検査をすることのほうが、正確で早いように思います」と提案しているが、現状で使われている検査は、既に体内にある病気を調べるもので、発症の前段階である「未病」を察知するものではない。冒頭の症例のように、5年後、10年後まで追尾しなければ、真価は分からない。 では、未病を察知する検査は必要ないのかと言えば、そんなことはない。前述したとおり、検査のトレンドは、「可能な限り発症前の未病の段階での発見をめざす方向」に進んでいる。 今、注目されているのはNECグループの「フォーネスライフ」が提供するヘルスケアサービス「フォーネスビジュアス検査」だ。この検査は、一生を通じてほとんど変わることがない遺伝子と違い、日々の生活の中で時々刻々と変化する血液中の「タンパク質」約7000種類を分析することで、心筋梗塞や脳溢血、肺がん等の4年後、5年後の発病リスクを調べ、予防のための行動変容に活かす。「病気にさせない」ことが目的なので、検査の正確さを実証するのは不可能だ。だが、人生100年時代と言われる現代。100年の生涯を健康で全うするには、未病からのアプローチが欠かせないことは、誰もが認めるところだろう。 先駆的な取り組みとしては神奈川県が2015年から、未病の状態を見える化したり、未病の改善につながることが期待できる商品・サービスのうち、特に優れたものを「ME-BYO BRAND」に認定したり、個々人の未病改善を後押しするアプリを開発する等、未病対策を推進している。 これからは未病の時代だ。新しい検査の有用性を見極めることはもちろん大切だが、今のところ従来の検査で検証することはできない。であれば医療がまず取り組むべきは、新しい検査をいかに使いこなすかを考えることなのではないだろうか。社会もそれを求めている。
現代ビジネス編集部