「嘘でしょ…」健診も全身がん検査もクリアした女性が「線虫検査」で「大腸ポリープ」この真贋はいかに?
PET検診の医師グループが否定
N-NOSEの有用性、とりわけ「検査の正確さ」については、「広告で言われているよりも低いのではないか」といった疑念の声も上がっている。 昨秋、オンラインメディア「NewsPicks(以下NP)」が7回連続で取り上げた記事は、「PET検診ワーキンググループ」の医師らによる日本がん検診・診断学会での発表と多数の関係者への取材に基づいているため、多くの人の注目を集めた。 ここでわざわざ「PET検診ワーキンググループ」としたのは、本件が各メディアで報道された直後、同グループが所属する「日本核医学会」が、「『日本核医学会のワーキンググループ』という記載は誤りです。正しくは、『PET核医学分科会のPETがん検診ワーキンググループ』が実施されていることです。PET核医学分科会は日本核医学会の分科会ではありますが、財務などを含め別組織です」との声明を発表したからだ。要するに、日本がん検診・診断学会での発表は、あくまでもPET検診専門医の見解であり、日本核医学会は一切関知しないということだ。 記事の中核は、N-NOSEの正確さをPET検査によって検証したところ、「実用化後の感度は13%しかなかった」こと、そして「既にがんと診断されている10人全員がN-NOSE検査でリスクが低いと判定されていた」という2つの点だ。N-NOSEの精度が公表されているものより低いと指摘されているのだ。 N-NOSEを販売するHIROTSUバイオサイエンス社は当然猛反発し、自社のホームページ上に数10ページに渡る反論を掲載。もっか、NP記者ならびに運営会社であるユーザーベース社を相手取り、民事訴訟を起こしている。今年3月13日には第一回審理が行われた。 いずれの主張が正しいかは、今後、法廷で明らかにされることなので、ここでの言及は差し控える。ただ、「N-NOSEの正確さをPET検査で検証する」手法と、その後の追加検証を、PET検診ワーキンググループとつながりのある全国200の医療機関に対する「アンケート調査」で行うことに対しては、がん検査に詳しい医師や、NPの記事に賛同していた医師たちから疑問が呈された。 たとえば日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科教授の勝俣範之医師は、 《話題の線虫がん検診。第三者である学会がきちんと精度調査をするのは良いことと思います。ただ、PET検査で精度調査ができるのか、というと、PET検査でも見逃されるがんが多いことがわかっていますので、PETでの精度調査は疑問があります。また、アンケート調査というのも不正確です。実際のがん患者さんと、がんでない方の尿を使って、ブラインドで検査をすることのほうが、正確で早いように思います》(『Yahoo! ニュース・エキスパートコメント』より ) と指摘している。PET検診ワーキンググループは、「アンケート調査」で「科学的な検証を行なう」と発表したのだが、「それは非科学的だ」と、生体肝移植の世界的パイオニアとして知られる京都大学名誉教授の田中紘一医師も述べている。 一方である医師は、次のように語っている。 「医療の世界では、新しい検査方法がどれだけ正確で、安全で、実際に使えるかをしっかりと見極めることが大切である。特にがんのような深刻な病気を見つける検査では、間違った診断や必要以上の診断を避けるために、その検査方法の正確さを確かめる必要がある。 PET検診ワーキンググループの調査は、線虫がん検査が実際に医者が使う場面でどれだけ役立つかをはっきりさせるための重要な一歩である。検査の結果がどんな影響を患者の診断や治療計画に与えるのか、そしてその検査結果が実際のがんのリスクとどれくらい一致しているかを科学的に調べることで、線虫を使ったがん検診の可能性を評価できるのだ」