「失敗は買ってでもしろ」を実現しました…起業率No.1「失敗大学」学長が振り返る郵政省に辞表を出した日
なぜ、「失敗は成功の母」と言われるのか。学生起業率日本一の情報経営イノベーション専門職大学学長・中村伊知哉さんは、「日本は失敗が許されにくい社会であるものの、失敗を繰り返すことで次の次元に進める」とその秘訣を語ります。 【写真】この記事の写真をもっと見る ■自分で大学を作ることにした 世の中で役立つものは、大学から生まれる。これが、私の考え方です。 Googleは、米スタンフォード大の学生ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンの研究プロジェクトから始まりましたし、マイクロソフトをビル・ゲイツが創業したのもハーバード大在学中です。フェイスブックもハーバード大学から生まれたのは周知の通りで、知識ばかりでなく仲間といった、いわば“大学の財産”を使って誕生しています。私が客員教授として赴任したマサチューセッツ工科大学(MIT)も、プログラミング言語(Scratch)を学内で作っていました。 こうした大学文化の、なんたる豊かなことか。 同じことを日本でも実現したい。ひと言で言えば、それが私の内なる野望でした。 そこで、思い切って自分で大学を作ることにしたのが、情報経営イノベーション専門職大学、「iU(アイユー)」です。 2020年に開学。今年で5年目となり、授業を通して学生全員が起業を体験、実際にこれまで48社が起業しています(2024年10月時点)。 結果として現在、起業率は日本でトップになりましたが、目標は“起業率を誇ること”ではありません。そう、大学という場を未知なる卵にしたかった。とにかく「産みの場」にすることが、ますます学長使命になりました。 ■起業に挑み始める大学1年生 実は、最初から起業家を育てる大学を目指していたわけではありません。 必修科目として、学生全員が起業を経験する仕組みを用意したのが始まりでした。大学1、2年生の間にIT、ビジネス、英語をしっかり学ぶ。そして3年生で4ヵ月のインターンを通じて社会の厳しさを知り、4年生で一度起業して卒業する、というカリキュラムです。 ところが、ふたを開けてみると、学生が1年のうちからどんどん起業に挑み始めるので、「ありゃあ!」と思うほど。学生たちのエネルギーは想像以上でした。 今では1年生時でも実際に起業ができるよう、カリキュラムや授業内容を柔軟に変えています。「日本の若者は元気がない」と言われることがありますが、実像は人それぞれです。「おぬし、やるやん!」と思わせる猛者が何人もいます。