元白鵬処分の内情と春場所の事情~浪速の熱気はすぐそこに
世代交代とそれぞれの旅立ち
本筋の土俵に目を向けると、過渡期の進行が感じられる番付となった。1年前は横綱と大関がそれぞれ照ノ富士、貴景勝の一人ずつという寂しさ。おまけに両者の休場で、途中から昭和以降初の横綱、大関陣不在だった。今年は1横綱4大関と華やかになった。世代交代が待望されてきた状況で、徐々に波が来て大関が3人増。次はいよいよ、新横綱誕生が望まれる段階で、八角理事長も「そろそろ、新しい横綱が欲しいところだ」と希望を示す。 中でも注目を集めるのが新大関琴ノ若。189㌢、172㌔の体格を生かして前に出る取り口は力強くなっており、初優勝を目指す。ただ、気になるデータがある。新大関で賜杯を抱くのは難しく、直近でも2006年夏場所の白鵬までさかのぼらなければならない。 要因の一つとして、昇進によって祝賀会をはじめとするイベントが目白押しになり、稽古不足になりがちな傾向になることが挙げられる。琴ノ若も初場所後は行事に引っ張りだこ。3月4、5日の二所ノ関一門連合稽古を経ていかに万全で初日に臨めるかが鍵になる。 次に、昨年の春場所で初制覇を果たした大関霧島に好成績が期待される。昨年九州場所で2度目の優勝。先場所で初の綱とりに失敗した。しかもチャンスを迎えながら14日目と千秋楽に2連敗する悔しい終わり方だった。最高位への再出発となるが、今場所は一つの節目だ。師匠の陸奥親方(元大関霧島)が4月に65歳の定年を迎えるため、陸奥部屋所属として最後の場所。部屋と自身にとって〝有終の美〟を狙う。 所属する時津風一門の関係者によると、霧島は陸奥親方や少数の力士、複数の協会員とともに、元横綱鶴竜が師匠を務める音羽山部屋に移る方向。その他の力士や部屋付き親方らは、一門内の複数の部屋に分かれて転籍する流れとなっている。これは言ってみれば、師匠間における〝世代交代〟。定年後も参与として協会に残れるが、部屋持ちの師匠にはなれない。音羽山親方は昨年12月に独立したばかり。2022年以降だけでも元大関豪栄道が師匠の武隈部屋、元関脇安美錦が率いる安治川部屋などが創設され、今年はさらに若手親方で独立の動きがある見通し。若き師匠同士の切磋琢磨という視点もますます興味深くなる。