元白鵬処分の内情と春場所の事情~浪速の熱気はすぐそこに
大相撲春場所が3月10日にエディオンアリーナ大阪で始まる。2月下旬に幕内北青鵬が弟弟子への暴力行為によって引退し、師匠の宮城野親方(元横綱白鵬)にも厳罰が科されるという衝撃的な出来事があった。相撲人気に水を差しかねない事態に、日本相撲協会は異例の姿勢で対処。一方、浪速に春を呼ぶ土俵では横綱候補としての大関陣の奮闘が大きな焦点となりそうで、チケットは早々に完売した。相撲列車がなくなって初の地方場所でも熱気に包まれそうな秘けつを探りながら、場所を展望した。
際立つ重大性に危機感
北青鵬を巡っては、初場所の途中休場が不可解との臆測が出て、一部週刊誌が暴行などの問題を取り上げた。事態が大きく動いたのが2月21日。相撲協会のコンプライアンス委員会が開かれ、師弟が両国国技館に呼び出された。2日後の協会理事会で協議し、宮城野親方は問題を知りながら協会に報告しなかったなどとして委員から年寄への2階級降格と3カ月の20%報酬減額の処分が決まった。加えて、師匠としての素養、自覚が著しく欠如しているとの裁定で、差し当たって春場所は伊勢ケ浜一門で宮城野部屋の師匠代行を任命することを決定した。 そして、春場所後の対応について珍しい文言が目についた。4月以降は部屋を伊勢ケ浜一門の預かりとして宮城野親方には親方としての教育を施すことを検討する方針になったが、その主体が「伊勢ケ浜一門と協会執行部」となった。従来の相撲界では、不祥事などで部屋の扱いを議論する際には一義的に、一門へ任せるパターンでよく行われてきた。 宮城野親方は現役時代、史上最多の優勝45回を樹立した傍ら、優勝インタビューの最後に観客とともに三本締めをするなどの問題行動で3度の処分を受けた。知名度抜群で将来的に親方としても角界をけん引する可能性もあるとされてきた。それだけに、北青鵬の愚行は言うに及ばず、親方の不十分な対応は事の重大性を際立たせてしまった。ある協会幹部はこう説明した。「一門へ丸投げする形ではなく、協会が関わって対処していくということ。しっかりと危機感を持ってやっていかないといけない」。執行部、つまり八角理事長(元横綱北勝海)をはじめとする在勤の幹部たちが直接関与しながら、立て直しについて協議する異例の態勢。事態の切実さがうかがえる。 宮城野親方は2月11日に新設の女子相撲大会「ドリームガールズ杯」開催に協力し、翌12日には14度目となった少年相撲の国際親善大会「白鵬杯」を開いた。競技普及やファン層拡大に努めた同じ月に残念な結果になった。処分を通告された2月23日の理事会。出席者によると、発言を促された同親方は「ありません」と答え、理事会メンバーからまず謝罪の意を表すようにたしなめられる一幕もあったという。出直しには、さまざまな意識改革が必要だろう。