「ヴィーガン食」と「老化」の関係は? 一卵性双生児21組を対象としたスタンフォード大学の調査結果で明らかになったこと
スタンフォード大学の研究チームがオープンアクセス・ジャーナル『BMCメディスン』に発表した研究結果によると、動物性の食品をまったくとらないヴィーガン食を8週間にわたって続けた人には、生物学的な老化の指標となる数値に大幅な変化が見られたという。 【写真】1ヵ月間「ヴィーガン生活」に挑戦してみた結果、変化したことは? ここでは、気になる研究とその結果、そしてそこからわかることを専門家と見ていこう。『Prevention』がレポート。
どんな研究?
研究チームは、食事が生物学的な年齢の推定に使用されるDNAメチル化(DNAの化学的修飾)に与える影響を調べるため、39歳の一卵性双生児21組を募集。双子のひとりには植物由来の食品のみを使用した食事(ヴィーガン食)、もうひとりには動物性と植物性の食品を含む、一般的に「健康的」とされる食事をとってもらった。 調査期間の終了の時点で、ヴィーガン食を実践した人たちは心臓、肝臓、ホルモン、炎症、代謝システムにおいて生物学的な老化を示す数値が大幅に低下していた。またこの人たちは、一般的な食事をしていたグループよりも平均で2キログラム多く体重が減少していた(最初の4週間、ヴィーガン食の方が200キロカロリー少なかったためだと考えられる)。 研究チームは、生物学的な年齢を表す指標に違いがみられたことには、体重の減少も影響した可能性があるとの見方を示している。
ヴィーガン食とは、動物由来の食品をすべて排除することだとされている。ハチミツやゼラチンなども含め、動物由来のものを一切とらず、ナッツや種子、豆類、野菜、フルーツ、全粒穀物、大豆などの食品だけを食べることだ。そのヴィーガン食は、細胞や老化とどのように関連しているのだろうか? 登録栄養士でアメリカ栄養士会の広報担当者であるメリッサ・プレストさんは、「植物性の食品が持つ抗炎症作用は、加齢に伴う変化の抑制に役立つとされており、寿命を延ばすことにも関連している可能性がある」と述べている。 また、栄養士でもあるシェフのジャッキー・ニュージェントさんは、植物由来の食品中心の生活は以前から、「心代謝性疾患(循環器疾患、2型糖尿病など)の発症を防ぐことにつながると考えられてきた」と指摘している。 ヴィーガン食を取り入れることは、動物性の食品をとる食生活よりも「質の高い食事をとることになる」という。腸内細菌の多様性を高めることになり、それが全般的な健康を促進し、「年齢を重ねるなかでも、生活の質を向上させていくことにつながる」と考えられている。
ヴィーガン食には注意点も
ただし、ヴィーガン食を始める前に知っておくべきこともある。それは、こうした食生活がすべての人に最適とは言えない可能性もあるということだ。 特に懸念されるのは、加齢とともにさらに重要性を増すビタミンB12(魚介類や肉類に多く含まれる)が不足しがちになる点。プレストさんは、ビタミンB12を強化した食品を選ぶことや、サプリメントをとることをすすめている。 そのほかニュージェントさんは、鉄分や亜鉛などの栄養素が不足するリスクがある人、骨粗しょう症の治療のためにカルシウムやビタミンDなどを多くとる必要がある人には、ヴィーガン食は適さない可能性があると話している。