食と健康×先端技術 静岡県がプロジェクト始動へ 食品ロスなどの課題解決 スタートアップと市町、企業つなぐ
静岡県は2025年度から、食や健康の分野に先端技術を導入し、産業振興と健康寿命延伸を図る「静岡ウェルネスプロジェクト(仮称)」を始動する。高い技術力を持つスタートアップ(新興企業)と県内企業のマッチングを強化し、食品ロスをはじめとする社会課題の解決や高付加価値食品の開発を後押しする。県民の健康増進をサポートするため、企業や市町、大学、医療機関などでつくるネットワーク組織の設立も視野に入れる。 目玉の一つが未来型食品産業の創出。テクノロジーで食の技術革新を起こす「フードテック」を活用し、茶殻や酒かすなど食品製造段階で生じる未利用食材の活用、必要な栄養素をバランス良く摂取できる完全栄養食や防災食の開発、機能性表示食品の届け出支援に取り組む。 県内外の先端技術を集めた展示会を開催し、スタートアップと県内企業のマッチングを図る。静岡県は農林水産物の生産品目数が全国トップクラスで、食品関連産業の集積も強み。一方、環境負荷低減や生産性向上、人手不足への対応を迫られていることから、デジタルやバイオといった先端技術をてこに、付加価値の高い製品・サービスの創出や競争力強化を促す。 民間の技術や知見を生かし、県内市町が抱える健康課題解決を目指す取り組みも始める。市町と新興企業をつなぎ、医療・健康データを活用しながらフレイル(虚弱)や生活習慣病予防などを支援する。 食を切り口に健康増進社会の実現を目指す現行の「フーズ・ヘルスケアオープンイノベーションプロジェクト」を見直し、食や健康の社会課題解決に重点を置いたプロジェクトへと再構築する。先端農業を推進するAOI(アオイ)、海洋資源を生かすMaOI(マオイ)、茶の需要創出を図るChaOI(チャオイ)といった既存プロジェクトとも連携する。 静岡県の22年の「健康寿命」は男性が73・75歳、女性が76・68歳となり、いずれも全国トップだった。県はウェルネスプロジェクトの展開によってさらなる健康寿命の延伸を図り、「県民幸福度日本一」の実現を目指すとしている。 フードテック フードとテクノロジーを組み合わせた造語で、食の問題を技術で解決する試み。植物性原料でつくる代替肉、遺伝子を高効率で改変するゲノム編集などがあり、世界人口増加による食料危機や気候変動に伴う不作への対応策としても期待されている。世界の市場規模は2020年時点で24兆円に上り、50年には280兆円に膨らむとの民間予測もある。
静岡新聞社