新型メルセデス・ベンツVクラスは日本のミニバンとはまるで違った! アルファードやヴェルファイアとは異なる1355万円の世界観に迫る
メルセデスのミニバン、頼りがいがあります。
運転席に乗り込み、「ハーイ、メルセデス」と、呼びかけてナビゲーションの目的地とオートエアコンの温度を設定してから、試乗を開始する。 スタートして真っ先に感じるのは、エアサスペンションが効果的に機能していること。決してふわふわするわけではないけれど、荒れた路面からの衝撃を上手にいなしてくれる。 エアサスと連続可変ダンパーを組み合わせたメルセデスのAIRMATICサスペンションは、路面のコンディションや走行シーン、ドライバーの操作に合わせて乗り心地と姿勢変化を最適化する仕組み。単に快適なだけでなく、これだけ大柄で背が高いボディなのに、ワインディングロードをきれいなコーナリングフォームでクリアするのには舌を巻いた。 ここで後席の乗り心地を確認するために、運転を交代してもらう。はたして、2列目シートもコンフォータブルだった。広々とした空間で、ゆったりとした乗り心地に身を委ねることができる。運転席と助手席は乗り心地がいいのに2列目と3列目はいまいち……というミニバンも多いなか、Vクラスは後席の乗員も楽しく移動できる。 で、試乗を続けていくうちに、トヨタ「アルファード」や「ヴェルファイア」、レクサス「LM」、日産「エルグランド」、ホンダ「オデッセイ」といった日本のミニバンとはまるで異なる種類のクルマだということがわかってくる。 まずVクラスの美点は、速度を上げれば上げるほど、フラットで快適になること。ここでも、AIRMATICサスペンションがしっかりと機能しているようだ。 悪路を突破してもミシリとも言わないほどボディは堅牢で、硬くて丈夫な乗り物が抜群の安定感で高速で移動していると感じる。そしてこの印象が、絶大な安心感につながる。もちろんファミリーカーとして使ってもいいだろうし、VIPを乗せるプロフェッショナルもこの安心感には納得するだろう。 弱点は、加速中のエンジンノイズだ。高速クルーズで一定回転を保って走っているときには騒音も振動も抑えられているけれど、市街地やワインディングロードなどでアクセルペダルを踏んだり戻したりしていると、ノイズの大きさが気になる。救いは音質が耳障りではないことだけれど、音量はかなりデカい。 2.0リッター直4ディーゼルターボは380Nmという大きなトルクを1600rpmという低い回転域から発生しているけれど、いかんせん車重が2.5tを超えるから、アクセルペダルを踏み込む頻度も高くなり、ノイズを感じる機会も増える。 まぁ、クルマ業界には、「NVHでは人は死なない」という格言もある。NVHとはノイズ(騒音)、ヴァイブレーション(振動)、ハーシュネス(路面からの突き上げ)のことで、こうした快適性の指標よりも、安全に走ることができる性能のほうが大事だろうという意味だ。人をたくさん乗せるミニバンだからこそ安定性と安心感を最優先するという考え方があっても自然だ。 試乗前は、ミニバンは日本に任せなさい! と考えていた。けれども実際に乗ってみると、そもそもの考え方がまるで違った。メルセデスのミニバン、頼りがいがあります。
文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)