うつ病で休職中の男性教員、「更年期障害」かも? 管理職やミドルリーダーが気を付けるべきこと
女性更年期障害とは何が違うのか?
――なぜ、コロナ禍で症状を訴える男性が増えたのでしょうか。 テストステロンとはいわば、パブリックなホルモン。人間が仕事をして生きていくための活動を支えており、賞賛されると増え、緊張すると減ります。そうしたホルモンの働きは古来から変わりません。狩猟採取時代は外で獲物を得て帰ると家庭で評価され、それがテストステロンを高める原動力になっていたと考えられています。 現代社会では、職場での賞賛、あるいは居酒屋や趣味のコミュニティーでの認め合いなどがテストステロンを高めてくれていますが、コロナ禍では、そのように自分を認めてくれる場が外出制限によって奪われてしまったため、男性たちは弱ってしまったのでしょう。 ちなみに女性ホルモンの「エストロゲン」は、家族に愛を与えるといったプライベートの行動に作用します。女性は閉経の前後10年間、このエストロゲンが減少することで不調が生じます。これがいわゆる女性の更年期ですが、この間、実はテストステロンの量はそれほど変化しません。更年期が終わって仲間との旅行や“推し活”を楽しみ始める女性が多いのは、社会に意識を向かわせるテストステロンが優位に働くようになるからなのです。 ――男性は、そのテストステロンの減少で元気がなくなってしまうのですね。 はい。ただ、遺伝子に閉経がプログラミングされていて例外なくエストロゲンの減少が起こる女性とは異なり、男性の遺伝子にはそうしたプログラムがありません。男性は、環境によってテストステロンの量が変わります。 例えば、転職や配置転換、退職など環境が変化して強い緊張やストレスが生じるとき、あるいは、仕事に慣れて周囲から褒められることがなくなってくるときもテストステロンが低下します。更年期障害は40歳以降の男性に多く見られますが、まさにこうした環境変化が起こりやすい年代ですよね。 ――男性の場合、具体的にはどのような症状が見られますか。 男性も、女性の更年期症状と同様に、顔のほてり、疲労感、うつ症状などが見られます。男性の場合はとくに、笑わない、イライラする、人にきつく当たる、やる気が出ないといった症状が出やすい。教員ですと授業がつらくなってくるでしょう。社会生活に支障が出るほど症状が重い場合、医療機関では、AMSスコアやADAM問診票を用いて更年期障害を診断しています。