【猫の下痢】内臓疾患や細菌感染の可能性も…病院に行く行かないはどう判断すればいい?獣医師が解説
寄生虫、細菌、内臓疾患なども下痢の原因に
猫の下痢の原因として、食事関連の次に多いのが寄生虫感染だと鳥海さんは言う。 「大人の猫は寄生虫に感染しても無症状のことも多いのですが、子猫の場合にはコクシジウムやジアルジアといった小さな原虫が小腸の細胞に寄生すると、下痢などの症状を引き起こします。その子のケアはもちろんのこと、もし多頭飼育をしているなら、ほかの子に感染させないことも重要です。糞便はすばやく処理し、汚染された場所は熱湯で消毒して乾燥させましょう」 また、食事や寄生虫のほかに、細菌感染や内臓疾患で消化器症状が出ることもある。 「膵臓や腎臓、肝臓などの疾患による下痢の可能性もあります。内臓疾患から来る下痢は、飼い主さんが気づく“最初の”症状になったりするので、見逃さないようにしたいですね。最初といっても、実は下痢の前に飲水量や尿量などに異変があることが多いはずです。 ただ、そちらはなかなか気づきにくいので、下痢がきっかけで動物病院に来て、内臓疾患が見つかるケースが結構あるんです。猫は体調不良を飼い主さんに訴えることはできないので、定期的に健康診断を受けさせてあげてほしいと思います」 健康診断の頻度は成猫の場合で年2回程度が推奨される。春は犬の狂犬病予防接種で病院が混み合ったり、猫がそれをストレスに感じたりするので、例えば3月と9月など、混雑を避けつつ、前の診断から半年以上あかないように受診するのが理想的だ。
様子見するなら期限を切って
飼っている猫が下痢をしたときに、飼い主さんが取るべき対応には、どんなものがあるだろうか。 「便の状態をよく見てあげてください。便が黒かったり、血が混じっていたり、寄生虫が見つかったりしたら、もちろん動物病院へ。また、便はそれ自体を病院へ持って行くか、写真を撮っておくかすると、診断の助けになります。ただし、残りの便や汚れたものは素早く処理してください。多頭飼育の場合は、感染症の可能性を考えて、ほかの猫から隔離しましょう」 しかし、下痢をした後の猫がいつも通りに元気に過ごしている場合、それでも動物病院へ連れて行くべきかどうかは判断に迷うかもしれない。様子を見ていいケースがあるとしたら、どんな場合だろうか。 「高齢や幼齢だったら万が一のことがないように、なるべく早く病院へ連れて行ってあげてください。また、どの年齢でも嘔吐や血便、食欲不振、元気がないなど、ほかの症状を伴っている場合はとにかく病院へ急ぎましょう。一方で、中年齢までの成猫で、大きな病気はしていなくて、今現在も下痢をした以外は普段通り──。こういうときは様子を見るのもひとつだと思います」 病院に連れて行くかどうか迷って様子を見るときには、具体的に条件を決めたり期限を切ったりするといいと、鳥海さんは言う。 「『心なしか普段より活発でない気がするので、朝になってもこの感じなら病院へ行こう』『今は元気そうだから、ひとまず食事や次の排便を注視することにしよう』といったことですね。ただ漫然と判断を先延ばしにはしないこと」 また、かかりつけの病院の診療時間や休診日を念頭に置いて考えることも大切だ。 「『大丈夫だとは思うけど、明日は休診日だから今日のうちに診てもらおう』という判断もアリです。午前中に受診できれば、その日のうちにできる検査がいろいろあったりします。下痢をきっかけに健康診断のつもりで病院へ行くのもいいと思いますよ」 ◆教えてくれたのは:獣医師・鳥海早紀さん 獣医師。山口大学卒業(獣医解剖学研究室)。一般診療で経験を積み、院長も経験。現在は獣医麻酔科担当としてアニコムグループの動物病院で手術麻酔を担当している。 取材・文/赤坂麻実