大学ラグビーV6帝京の次なる目標は社会人撃破!
戦術の変質で、個々の判断力をなかば強制的に引き上げる…。岩出監督としては「大学選手権優勝」のためだというそのサイクルは、筑波大とのファイナルで奏功した。 前半25分、敵陣中盤右でボールを獲得したチームは、一気に左へ展開。フォワードの一角であるナンバーエイト河口駿が、いったんパスした味方の外側へ回って再度ボールを受け取る「ループ」の動きを繰り出す。そのまま攻撃は連なる。合間では、フルバック森谷圭介が効果的な囮役となっていた。最後はウイング磯田泰成のトライなどで、得点板は「21-0」と光った。 選手間のコミュニケーションからなるハーモニーを、岩出監督は「オプション。もともと持っていました。フォワードでも、そういうことができるようになってきまして」と手応えを語っていた。 「1対1、力勝負は、間違いなくトップリーグと互角」 帝京大の合同練習を受け入れたサントリーの関係者は、お世辞でもなくそう認める。ただ、絶対的な学生王者が有力外国人を含めた社会人チームに抗うとなると、やはり障壁はある。学生相手に好判断を示したとはいえ、件の関係者は「ただ、ちょっとした判断のところで…」。プレッシャーがかかるなかでのプレー選択に、改善の余地があると示唆した。 セットプレーではまず、ロック小瀧尚弘を軸に自軍ラインアウトを確実にキープできるかが今後の見所。キヤノンの元ニュージーランド代表フランカー、アダム・トムソン級の妨害を、今後の練習でどこまでイメージできるか。 スクラムでは筑波大を圧倒も、トップリーグ勢を敵に回すと出来は未知数となろう。ヤマハでは元ジャパンの長谷川慎フォワードコーチが、相馬コーチに似た理論を先んじて唱えている。帝京大のフッカー坂手は「あの(決勝戦で筑波大を制圧した)では、トップリーグには勝てない。形の部分ではまだ」と言い切る。 気質に目を向ければ、指揮官も認めるチームの「のんびりとしたところ」も気がかりか。圧勝劇を演じたこの午後も、前半は落球を重ねていた。古今東西、格上はそうした緩みをきりりと突いてくる。 名脇役のフランカー杉永亮太はその向きを認め、ただ、前を向くのだった。 「帝京大は、スタートが悪い。最初から、死に物狂いで刺さらないといけない。まだ1ヶ月、ある。全てのプレーで100パーセント動けるようになったら、(トップリーグ相手に)1勝でも2勝でも、いけると思います」 決勝戦直後の岩出雅之監督は、日本選手権に向けた意気込みを問われ、「まだ、わかりません。きょうは大学選手権を心から楽しんでいました。ただ、これが終わってからトップリーグへの挑戦に取り組むのではありません。1年間、かけてやってきました」。 2月6日にある日本選手権1回戦では、トップリーグのワイルドカードトーナメントの勝利チームとぶつかる(会場、具体的な対戦相手は未定)。 (文責・向風見也/ラグビーライター)