大学ラグビーV6帝京の次なる目標は社会人撃破!
ある特定の強みを育て、それを強調した戦略を立てるのではない。ラグビー選手およびラグビーチームとしての総合力を、トップリーグレベルに引き上げて勝負する…。学生シーンの絶対王者は、かようなスタンスで年間計画を遂行してきた。春先からの走り込みで運動量を高め、サントリーなどの強豪との合同練習で格上への免疫をつけてきた。 トヨタ自動車戦で苦しんだスクラムのてこ入れには、OBで元日本代表プロップの相馬朋和氏が立候補した。前年度までプレーしたパナソニックのコーチとの掛け持ちで、母校の指導にあたった。 現役時代は相手の強さをいなす身のこなしを磨いてきたが、若者へは真っ向勝負で押しきる強さを植えつけた。フォワード8人が一体となって組めるよう、各ポジションの姿勢や意図を全選手に共有させた。最前列中央のフッカー坂手淳史に、「スクラムの地力がついてきた」と喜ばせた。今年度の強化プラン作成にあたりセットプレー強化が必須と感じていた岩出監督にとっては、渡りに船だったろう。 「スクラムの専門コーチがいることで、選手のスクラムに関するコミュニケーションが増えた部分はある。ついてたな、と」 お家芸の肉弾戦へのこだわりはいまも継続。加えて流主将の言う「速い判断」を醸成させる手段として、シーズン中に戦術のブラッシュアップに取り掛かった。 昨年11月16日、東京は秩父宮ラグビー場。明大との対抗戦を結局は31―6で勝利も、後半は7―0とやや停滞した。ただ、直後に感想を問われた岩出監督は、こう内幕を語ったのである。 「新しく始めたことと、いままでやってきたことをミックスさせた。まだまだ絵に描いた餅のところがあった。(この時期になぜ、ではなく)この時期だからこそ取り組んだんです。いままでの積み上げにプラスして、相手を翻弄して、クタクタにさせるラグビーができるように」 従来どおりのチームの攻撃陣形の枠内で、各人に多くの状況判断を求めてゆく…。選手の証言を総合すれば、攻撃面での「新しくやろうとしたこと」についてはこんな像が浮かび上がる。 ――以前はある所定の位置でボールをもらった人は、一律でただぶつかるだけだった。それが、同じ位置の選手も状況によってはパスも求められるようになった…。例えるなら、そうした変化でしょうか。 プロップの森川由起乙副将は「表現は難しいんですけど」としつつ、「そういう感じですね」と応じた。