なぜ都会シニアはピンピンで地方シニアはヨボヨボなのか…整形外科医が勧める健康寿命を伸ばす意外な活動
■地方で目立つ実年齢より老けて見える人 現代人にひざ痛が増えているのは、ひとえに便利になった世の中、つまり現代人が運動不足に陥りやすい環境が原因のひとつと考えられます。歳を重ねると誰もが若い頃より筋肉量が落ちます。その状態で運動不足になると、筋肉はますます少なくなり、それゆえに運動が億劫になる人も多いのです。 運動不足の最大の原因は車社会です。実は都会より地方のほうが圧倒的に車社会なので、地方在住の方ほど運動不足に陥る人が多いのです。都会より交通が不便だから仕方がないとはいえ、家族ひとりひとりが自家用車を持ち、徒歩10分のコンビニエンスストアにさえ、車で向かってしまう現実。 私の患者さんを見渡しても、都心在住の方は意外とよく歩いています。一見、運動とは縁遠いような高齢の女性が、実は買い物好きで、百貨店の中を3時間ぐらい平気で歩いているのです。 地方在住の高齢者は、車社会の中で歳を重ねてしまったせいか、なかなか長時間は歩けないようです。学会で全国各地に行くと、地方では実年齢より老けて見える人が目立ちます。何より姿勢が悪いのです。背中が曲がっていたり、O脚になるなど、骨格に問題があると、どうしても老けて見えます。これもおそらく車社会が背景にあるのでは、と考えています。 ■旅行や買い物はどんどんした方がいい 人工関節手術を行った患者さんに対しては、スポーツが好きな方にはスポーツを、旅行が好きな方には旅行を、そして買い物が好きな方には買い物を、と積極的にお出かけを勧めています。スポーツは術後2カ月から許可しています。 旅行や買い物はその楽しさゆえに無意識にたくさん歩くので、結果的に筋肉の強化になるのです。これは人工関節手術を行った患者さんだけでなく、ひざ痛初期の患者さんにも勧めます。 手術や運動でひざ痛が治っても、それで運動をやめては元の木阿弥。痛みが消えても運動をやめて筋力が低下すると、再び痛みが出てくる可能性があるからです。再発を防ぐには筋肉を維持しなければなりません。 日頃から長時間歩く人は「この歩き方をすると楽」など、正しい歩き方が感覚的にわかってきます。逆に歩いていない人ほど「歩くより、手っ取り早く走る」など、いきなりランニングをして無理をしがち。長時間歩くより、短時間走るほうが精神的に楽だからです。でもそれこそひざに衝撃を与える原因になりかねません。ゆっくりウォーキングをして、骨盤や脚の筋肉をきたえることが、ひざにとってよい運動なのです。