【解説】17年ぶりの利上げ!マイナス金利解除で、暮らしへの影響は?今後の金融政策は?
■マイナス金利・3月解除の背景
――やはり大きな政策変更なのですが、この3月に踏み切った理由は何でしょうか? まず、物価と賃金の好循環について、総裁はずっとポイントだと話してきました。連合が先週発表した、春闘の第一次集計は、平均賃上げ率が33年ぶりの高水準でした。これは政策転換に多くの人が納得できる材料になったとみられます。 それから、日経平均株価が最高値をずっと更新してきて、4万円に乗せています。3月に政策変更するリスクは、決算の時に株価が下がると企業決算が悪くなってしまうということですが、この株価で不安は減りました。 さらに世界経済ですが、アメリカなど景気はソフトランディングの可能性が高まってきました。こうした条件が日銀の背中を押しました。 前回1月の会合のとき、政策変更は3月か4月とみられていました。その段階では4月とみる人もおおかったですが、私たちの取材で、日銀は条件次第で、3月変更に前向きだと、前回の解説でもお伝えしました。そして、解除の条件が3月に整ったということです。
■4月の政策変更でなかったのは…
――4月の解除でなかったのは、どういう理由ですか? ひとつは、個人消費が弱いことで、景気の先行きに不透明感があります。また賃金の水準ですが、先ほど総裁は「ある程度の姿になる」と予測を話したんですが、実際に出てみないとわからないところがあります。それから政治の状況。これは日本では4月の政策決定会合直後に補欠選挙があります。またアメリカの大統領選挙も近づいて、世界の状況に不安定な要素がある。 それより、3月に相当条件が整っているので、政策変更するという判断になったのだと思います。
■この先の金融政策・利上げのペースは?
――今後、金利はどんどん上がっていくと考えた方がいいでしょうか? 大きく、どんどん上げていくという事は考えにくいというのが共通の認識です。アメリカなどのような2%、3%という利上げはないと思います。ただ、今、日本は、実質ゼロ金利あるいは、わずかにプラスになったくらいなんです。これをどうするかは、市場の見方と日銀の関係者の考えとには、少しギャップがあるのではないかと思っています。 というのは、今の金利は名目ではプラスになっても、物価があがっていますので、実質ではまだ大きくマイナス。この後名目の金利を0.25%や0.5%に上げたとしても実質金利はマイナスで緩和的な状況と言えます。ぜロ金利状態をずっと続けるという観測もあるかも知れませんが、意外と早めに少しは上げていく可能性があります。そうすると気になっている住宅ローンの変動金利も変わってくる可能性はあります。 ただそうは言っても、日本は金利0.5%超えていた状況というのは、実は金利を「公定歩合」というもので見ていた20年近く前です。0.5%超えは長く経験していないので、0.5%を超えた場合にどういうことになるか、これはだいぶ慎重な大きな判断になるのではないかと思われます。 ――19日の決定会合では17年ぶりの利上げということで、日銀の大きな決断だったと思うんですけども、この先どんな影響が出てくるのかですね? 19日は大きな転換点ですので、私たちももう一度金融を勉強し直す必要があるかもしれません。次の4月26日の政策決定会合では、日銀が今後の見通しを示す展望リポートも出ますので、こちらも注目していきます。