サカナクションからUNDERWORLD、PHOENIXほか。サマソニ前夜祭のSONICMANIAをレポート【写真9枚】
この他にも注目アーティストが目白押し。深夜25時を過ぎて登場した坂本慎太郎は、クラブミュージックとは対極を成すようなゆらゆらと揺れるバンドグルーヴながら、これがまた深夜帯に浴びるとこのうえなく心地よく、彼のアイデンティティとも言える歌声と印象的で美しい日本語の歌に思わず心と身体がゆさぶられる。そこに複雑なベースラインがうねりを作ると、サイケデリックな坂本のギター、そして会場の三面を使ったVJも相まって、彼独自のダンスミュージックを堪能させてくれた。 その空間を満たした波動をグラデーションのように最高の形でつなげていったのが、次にSONIC STAGEに立ったcero。ボーカル&フルート、ギターの髙城晶平、キーボード荒内佑、ギター橋本翼の3人組バンドながら、サポートメンバーを含めた総勢8名のステージで、音楽の楽しみ方を強制することなく、手を挙げて踊っても、地べたに座って静かに聴いても、仲間と談笑しながら音楽に耳を傾けても、いろんな楽しみ方をしていいんだよと肯定してくれているかのようなパフォーマンスは、まるで音楽を通して、一夜を共にすごした観客たちと語り合っているかのような音楽世界であった。 そして夜の最も深い時間帯、TESTSETがソリッドなビートをPACIFIC STAGEに轟かせた。80'sテクノポップ/ニューウェイブを彷彿とさせるサウンドながら、ロックのクレイジーさを爆発させ、それを最先端のダンスグルーヴでトリートメントするという多重構造的なバンドサウンドで、もはやMETAFIVEの派生バンドという枕詞も不要なほどに、砂原良徳(key)、LEO今井(Vo)、白根賢一(Dr)、永井聖一(G)の個性がさらなる進化を果たしていた。そうした側面が色濃く表現された新曲「Sing City」や未発表の最新曲まで披露しつつも、ラストに演奏されたMETAFIVEの楽曲「Full Metallisch」「The Paramedics」で、踊りながらも心を打たれた観客は多かったことだろう。 こうして19組のパフォーマンスが終了すると、ソニマニ全体のラストを飾ったのは牛尾憲輔(OST Dance Set)によるDJだ。彼がこれまでに手掛けたアニメの劇伴(チェンソーマン、ダンダダン、ピンポン、平家物語、聲の形など)をダンスアレンジした“サントラライブ”で、そのサウンドはもちろんのこと、アニメの本編映像を使ったVJが流されるとフロアは歓喜に沸いた。まさにアフターパーティと呼ぶに相応しい牛尾のDJがクライマックスを迎えると、会場の外はすっかり明るくなり、10時間前は台風の渦中にいたことがまるで嘘のような空が広がっていた。 取材・文:布施雄一郎 (C)SONICMANIA All Copyrights Reserved