サカナクションからUNDERWORLD、PHOENIXほか。サマソニ前夜祭のSONICMANIAをレポート【写真9枚】
「SUMMER SONIC 2024」前夜祭のオールナイト屋内大型エレクトロフェス「SONICMANIA」(以下、ソニマニ)。今年は台風7号の直撃と、それに伴う交通機関の計画運休などで一時は開催も危ぶまれたが、ぎりぎりのタイミングで台風の進路がわずかに逸れて関東上陸が回避されたことで、荒天の中ではあったものの、8月16日、19時に無事に開場を迎えることができた。 【全ての写真】サマソニ前夜祭『SONICMANIA』の出演アーティスト 例年同様、千葉・幕張メッセのホール1~2に「MOUNTAIN STAGE」、同ホール4に「SONIC STAGE」、そして同ホール8に「PACIFIC STAGE」という3ステージが用意され、タイトル通りに国内外の“音楽マニア”と言うべき20アーティストが集結。この日、この場所にたどりつけた者だけが味わえる至極のサウンドとグルーヴで、忘れがたい一夜を作り上げてくれた。 ずぶ濡れで会場に到着した多くの観客を最初に歓迎してくれたのは、「出れんの!?サマソニ!?」で選ばれた双子のSouta(兄)とrent(弟)の2ピースバンド、Tyrkouaz。ドラムンベースを基軸としたオルタナ/サーフロック系バンドサウンドで、PACIFIC STAGEに集まった観客のストレスを一気に開放してくれた。 続いてSONIC STAGEの先陣を切ったのは、4人のビートボックス・クルーで結成されたSARUKANI。リズムだけでなく、ステージから流れる曲/BGMのすべてをビートボックスで表現しながら、オリジナル曲に加え「SONIC MANIA Artist medley」としてサカナクションやUNDERWORLDのカバーを披露。フロアを大いに沸かせた。 そして20時30分、台風最接中の屋外のみならず、一番大きなMOUNTAIN STAGEにも雷鳴が轟き、「Ame(B)」のコーラスが会場に響き渡る。呼応するかのように湧き上がる地響きのような大歓声。サカナクションの登場だ。彼らは2022年ソニマニ出演が予定されながら山口一郎(Vo & G)の体調不良によりキャンセル。同年の「UNDERWORLD×サカナクション」ジョイントライブも完全な形では実現できなかった(サカナクションは山口を除くメンバーが特別DJセットで出演)。 それから約2年の休養を経て、サカナクションは今年に入り「完全復活」を宣言、7月に全国ツアーを終えたばかり。その勢いのままにMOUNTAIN STAGEのトップバッターとしてステージに立つと、会場からは「アイデンティティ」「ミュージック」「新宝島」など多くの曲で大合唱が起こり、ソニマニ全体がサカナクション完全復活を祝っているかのようであった。その光景は、一般的に「ロックにクラブミュージックを融合させた」と評されることが多いサカナクションが、実は「クラブミュージック界隈にロックサウンドを浸透させた」という別の大きな功績を持つことも改めて強く感じさせた瞬間だった。 その熱気をさらにヒートアップさせていったのが、次にMOUNTAIN STAGEに姿を現したUNDERWORLDだ。大歓声の中で登場したカール・ハイド(Vo)とリック・スミス(Key)が「Two Months Off」「Dark & Long」と代表曲を立て続けに披露すると、会場は熱狂の坩堝に。 単に人気曲だというだけでなく、とにかく聴く者の身体を自然と動かすビートと感性を圧倒する低音感が素晴らしく、そこに"歌"と"ラップ"の狭間を漂うカールのリリックが重なることで、唯一無二のクラブミュージックを体感させてくれた。「Techno Shinkansen」「Denver Luna」などの最近の曲から「Kittens」「Tin There」などのレア曲も披露し、ラストは大定番曲「Born Slippy」で"今"のUNDERWORLDを余すところなく披露した。2年間の時を経て、「UNDERWORLD×サカナクション」のリベンジが果たされた。 そんなUNDERWORLDとクロスフェードするかのようにSONIC STAGEで始まったのが、パリを代表するバンドPHOENIXのステージ。パリ五輪閉幕式でもパフォーマンスを行った彼らを一週間も経たずに日本で観れるとあって、SONIC STAGEはあふれんばかりの観客で埋め尽くされ、「Lisztomania」「If I Ever Feel Better」「1901」など、ロック/ダンス/オルタネイティブなどの多彩な要素をミクスチャーしながらポップに仕上げた彼らの楽曲に観客は歌声と拍手で応える。しかも演奏だけでなく、ステージ後方の全面LEDスクリーンを駆使した映像演出とバンドのシルエットの融合感も素晴らしく、彼らの世界観はすべての観客の耳と目を魅了した。