「百獣の女王」はどの動物? 地上最大か、海で最強か 強いメスを誇る候補を考えてみた
団結して調和を守る平和主義者、800万匹を1匹のメスが率いる昆虫なども
百獣の王はライオンだが、百獣の“女王”は誰だろうか? ブチハイエナは百獣の女王候補の一つだ。オスより体が大きく、より攻撃的なことが多いだけでなく、6~90頭程度の群れを率い、アフリカの捕食動物のなかで最も長く子育てを行う。 ギャラリー:「百獣の女王」はどの動物? 写真5点 しかし、女王の称号にふさわしい動物はほかにもいる。動物界にはメス主導の社会がたくさんある。陸上で最も大きな動物から海で最強の動物、とても小さな昆虫まで、サバイバルスキルを伝授したり、争いを解決したり、体を張って仲間を守ったりして、強いメスを誇る百獣の女王の候補を挙げてみよう。
サバンナゾウ
サバンナゾウのなかでも、最も高齢で体が大きいメスは、ほかのメスたちにとっての知恵袋的な存在だ。多くのゾウは一生を母親や祖母と一緒に過ごす。ただし、メスの家長は独裁者ではない。家族のメンバー間で意見を出し合い、行動計画を立てる。 若いメスは「子守」をしたり、赤ちゃんゾウが立ち、歩き、泳ぐのを助けたりしながらリーダーシップを学んでいく。
ハキリアリ
ハキリアリのコロニーは最大800万匹から成り、たった1匹の女王がその頂点に君臨する。小部屋が複雑に入り組む幅15メートル、深さ5メートルほどの地下の巣で、女王が働きアリを支配している。 女王アリの寿命は最長20年で、生涯で2億匹もの卵を産む。その子育てはすべて働きアリの仕事だ。
ボノボ
ヒトに最も近縁な種であるボノボの社会は、メスがリーダーを務め、強い友情で結ばれ、おおむね平和だ。毛繕い、食事、社交に多くの時間を費やす。 しかし、オスがしつこくメスを困らせて共同体の調和が脅かされると、メスたちが団結して加害者のオスを襲うことがある。
シャチ
シャチの群れでは、“おばあちゃん”がさまざまなことを一番よく知っている。おばあちゃんシャチの存在によって、幼い孫の生存率が高まる。おばあちゃんシャチの死は「家族に多大な影響を与える」と、進化生態学者のダン・フランクス氏は述べている。実際、おばあちゃんシャチが死んでからの2年間は、幼い孫が命を落とすリスクが劇的に高まるという研究結果もある。 また、シャチはメスが閉経を迎える珍しい種でもある。メスは40歳前後で繁殖を終え、最長90歳まで生きる。一方、オスの寿命は50歳ほどだ。
文=Rachel Fobar/訳=米井香織