新たな「ひらめき」の場を 無限四角で注目の美術家MINAMI MIYAJIMAさん 一聞百見
四角形を描きながら、絵画なのかデザインなのかよく分からないけれど、どこか気になるアートを作る作家である。スクエアアーティスト、MINAMI MIYAJIMA(ミナミ・ミヤジマ)さん(26)は数年前から大阪市東成区の借家を改装してアートスペース(ギャラリー)を始めた。カフェバーも併設しているため、アーティストでアートスペースの代表でカフェバーの主人で主婦でもある。いくつもの顔を使い分け、忙しい日々を送る若き美術家を訪ねた。 【写真】令和3年の2回目の個展会場は天井や床、彫刻などを四角で埋め尽くした。この頃キャップがトレードマークだった ■カルチャーが見つかる場所・今里で しばらく見ないうちに、ずいぶん大人になったなあと感じたのは、きっと彼女がキャップ(野球帽)をかぶらなくなったからだ。 初めて会ったのは3年ほど前。知り合いの作家の個展を見に行ったギャラリーのコンクリートの土間に、不覚にも万年筆を落としてしまい、ペン軸を折るという不運に見舞われた。 そのとき、「接着剤、ありますから」と、手際よくその場でくっつけてくれたのが、ストリート系ファッションを意識してキャップをかぶり、そこで個展を開いていた彼女だった。 天井や壁面、床、さらに彫刻や調度品まで、自分の周りを全て手描きの四角形で埋め尽くした彼女のインスタレーションに、不思議な情熱を感じた。それが縁で、何度か取材する機会があった。 彼女が代表を務める「JITSUZAISEI(ジツザイセイ)」がオープンしたときも取材した。大阪・今里の住宅街にある3階建て民家をギャラリー仕様に改装した、知る人ぞ知る隠れ家的アートスペースである。 「今里っておいしい有名店もあれば80歳くらいのおばあちゃんが550円でかつ丼を出してくれる店もある食文化豊かな町。近くに商店街もあるし、掘れば掘るほどカルチャーが見つかる場所です」 店内に入ってすぐに吹き抜けがあるトリッキーな構えで、大きな作品の展示も可能。1、3階が展示スペースで2階に自分がデザインした壁に囲まれたカフェバーエリアがある。 現在、女児の日常を愛らしく描いた「甘いパンが食べたい ひすい個展」を開催中だが、取材に行ったときには「宏美企画ドローイング展『せいめい』」をやっていた。26作家170点弱の作品を並べた展示で、初日の3月30日には開幕前からお客さんが並んだ。