オリオールズが暴動の影響を受けてMLB初の無観客試合
メジャーリーグのボルティモア・オリオールズは、地元ボルティモアで起きている暴動の影響から安全が確保されないため、現地時間、29日(水曜)のホワイトソックス戦を無観客試合として行うと発表した。メジャーでの無観客試合は史上初。 ボルティモアでは、黒人男性が、白人の警察官から受けた暴行が元で死亡した事件を受けて、大規模なデモが起きたが、一部の住民が暴徒化して、ドラッグストアを襲ったりパトカーを燃やすなどの暴動が発生した。夜間外出禁止などの非常事態宣言が発令される中、すでに27日と28日のオリオールズのホームゲームは中止にされている。また週末の5月1日から3日まで予定されていたタンパベイ・レイズとの3連戦は、本拠地のカムデンヤードから敵地のトロピカーアフィールドでの主催ゲームに変えられた。すでに中止になった試合は、5月28日にダブルヘッダーで行われる予定だ。 チームも大きな打撃を受けるが、CBSスポーツなど複数の米国メディアの報道によるとオリオールズのバック・ショーウォルター監督は、「街と人々の安全が確保されること第一。ホームゲームを失うことを好む人間など誰もいないが、それよりもっと重要なことがある。あらゆるシナリオを考えた上で我々は決断した」と語っている。無観客試合に、プラスして3試合のホームゲームを失うことになるオリオールズは、経済的にも大きな収入を失うことになるが、オーナーのピーター・アンジェロスは、ショーウォルター監督に「お金の問題は関係ない。それよりファンの安全が大事」と伝えたという。 サッカーの世界では、無観客試合は珍しくない。最近では、昨年9月にロシアのプレミアリーグに所属するCSKAモスクワのサポーターがチャンピオンズリーグのローマ戦で人種差別ととれるサインの掲示に加えて発煙筒の投げ込みなどの行為を行い、試合の進行を妨げたとして、欧州サッカー連盟から3試合の無観客試合と約2800万円の罰金をかせられた。Jリーグでも、昨季、浦和レッズがサポーターの差別を誘発するようなサインをスタジアムに掲げていたことで無観客試合をリーグから命じられている。 だがプロスポーツにおいて街の治安が理由で無観客試合が行われる例は少ない。野球の殿堂とMLBの公式歴史家のジョントム氏によると、「無観客試合は、マイナーリーグではあったが、メジャーの公式試合ではない」とのこと。記録上は、1982年9月28日に行われた観客数「6人」のナショナルリーグのゲームが最低観客動員記録。マイナーリーグでは、デイモン市の洪水の影響で2008年6月にナッシュビルで無観客試合が行われた例があるというが、メジャーでは例がない。 またボルティモアでは、メジャーだけでなく、NHLのボルチモア・レイバンスがファンのためにスタジアムで行う予定だったドラフト・パーティーを中止にしている。かつてオリオールズに所属していた関係でボルティモアに自宅のあるレッドソックスの上原浩治はブログに「何かデモとは違うことをしてるやんって思ってしまう。家族が無事であることを願うしかない…」と不安な心中を綴っていた。無観客試合で白熱したゲームが期待できるのかどうか。事態の一日も早い沈静化が待たれる。