「2024さだまさしコンサートツアー“51”」レポート「もしくはまだまだ知らない“さだまさ史”について」
旅路は銀河へ──『決心~ヴェガへ~』
「このコンサートはミステリーツアー」という説明通り、行く先は風まかせ、いや、さだまかせ。これがとんでもない場所に向かうのだ。 気が付けばステージは夜の色に染まり星座が浮かんでいる。 『決心~ヴェガへ~』が流れる。観客の笑顔がふわあと一斉に上を向く。今、会場全体がまさに一緒に星空に走っている。銀河鉄道に早変わりだ。宇宙、ペルセウスに向けて! あとで調べると、この曲は『恋文』(2004年)というアルバムの収録曲だった。私は初めて聴いた。隣のマダムもそうだったらしく「えっ、知らない(驚)」と呟いていた。その声が本当に悔しそうで何ともかわいくて、無意識に小さくガッツポーズ。尊い。さだまさしライブ、尊い! そうか、知らない曲があると悔しいくらい、もう何年も通う大ベテランの旅人がたくさんいらっしゃるのだ。 同時に、「ごめんね、知らない曲ばっかりだけど」と言ったときの嬉しそうなさださんの顔を思い出す。まだまだ、知らない曲があるぞ。それを巡る旅は楽しいぞ、新しい発見があるぞ。黙って俺に、ついてこい――。そんな風にも思えるこのコンサートは、51年目の関白宣言なのかも?
音で故郷を作る「さだ工務店」とともに懐かしいあの場所へ
MCでさださんは、仲間たちとめぐる音楽の旅について話しはじめた。1年のほとんど、ツアーに出ているという。世界中巡る日々は、とっても楽しそう。ただ、昔来た街の風景はときに、大きく変わりすぎて、手に負えない生き物のようになっていくような、切ない変化もあるようだ。 日本という国が、さまざまなものを失っていく――。そんなトークを挟み、『東京』『1989年渋滞(ラッシュ)』と続く。私は20代から30代、東京に行きたくて行きたくて仕方がなかった。持ち前のビビリな性格ゆえ、結局関西から出ることはなかったけれど、彼の多くの曲に、美しくて寂しくて美しい東京が描かれていて、より憧れたものだ。 その頃の東京の上空に心は飛んだ。 きっと彼の音楽の機関車“SD51”は、こんな風に、せつなかったり、嬉しかったり、ひとりひとりの思い出の駅に停車しているのだ。愛しい土地、故郷の音を作る「さだ工務店」という頼もしい音の職人たちもいる。『さだ工務店のテーマ』『北の国から~遙かなる大地より~』では、頭の中に、小さい頃遊んだ場所がパズルのピースが合わさるように、ゆっくりと再生されていく。客席に揺れるペンライトが街灯りのようだ。
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