「引退馬って呼び方もやめたい。引退しても馬の人生に終わりはないから」 名馬たちの個性をプロデュースし、引退馬ビジネスに革命を起こすヴェルサイユリゾートファームを訪ねて(後編)
崇文さんは「繁殖の種付けでスタリオンへ行ったとき、〝海外に絵を描く馬がいるよ〟ってスタッフから聞いて、漠然と誰かにやらせてみたいな、と考えていたんです。それでキャンバスと赤ちゃんが口にしても大丈夫な絵具を馬のために用意して…。アキュートはめちゃくちゃ大人しい子で、ある日、SNS用に帽子をかぶせてみたら、とりあえず似合っていたので絵もいけるかなと思った」と画伯の誕生秘話を明かした。
自分で筆を動かすと色がつくことが分かり、アキュートは楽しそうに絵を描いた。色鮮やかな作品はTシャツとなり、約1600枚売れて牧場の運営を助けてくれた。
「馬はみんなアイドルですね。たとえばAKB48みたいな感じで、こちらはプロデューサー。馬が自然とやってくれる行動や性格を見て〝こうしたら楽しい、おもしろい〟と個性をプロデュースしてあげるのが自分たちの役割だと思っています。人間のアイデア次第で馬は自分たちが生きるお金を生み出すことができる」と頼りになるパートナーたちに胸を張った。
12月2日から年明けの1月31日までヴェルサイユリゾートファームは2度目のクラウドファンディングを行っている。目標額を4000万円に設定し、競走馬や種牡馬だった彼らを安全に人を乗せることができる乗馬に再調教するリトレーニング用のインドア(屋内馬場)を7月末に完成させる予定だ。
「阪急杯などを勝ったビービーガルダンがうちの引き馬として乗れるんですが、有名な子にまたがれるとファンも喜んでくれるので、乗馬にできる設備をうちで作りたい、と思ったんです。今は全馬、外部でリトレーニングしているので。最近、アキュートやグランプリボス(2010年朝日杯FS)など種牡馬上がりの子も増えて、まだまだ若かったりもするので、人が乗れるようにしてあげたい」と説明する。
リトレーニング以外でのインドア活用も模索し、雨の日でも馬と一緒に結婚式を挙げられるプランなどを考えている。