道長の逆転劇開始、防御の弱さを突かれた三条天皇の敗因を振りかえる【光る君へ】
吉高由里子主演で『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。11月10日放送の第43回「輝きののちに」では、道長に対してナイスファイトを繰り広げていた三条天皇の勢いにかげりが。さらに道長の嫡妻・倫子の本音が、はじめて赤裸々に明かされる場面もあった。 【写真】「私を二度と頼りにするな!」と怒りをあらわにする実資 ■ 耳も目も不自由になった三条天皇は…第43回あらすじ 藤原道長(柄本佑)の娘・妍子(倉沢杏菜)と三条天皇(木村達成)の間に子が生まれるが、道長が望んだ皇子ではなかった。その後内裏で火災が起こったことに加え、三条天皇が耳も目も不自由になっていることを知った道長は、天皇に譲位を迫ることに。しかし天皇には位を譲る気は毛頭なく、道長に「そんなに朕を信用できぬなら、そなたが朕の目と耳になれ!」と命じる。 三条天皇は、藤原実資(秋山竜次)の息子を蔵人頭にすることを条件に、実資を味方に付けた。実資は道長と「政とはなんでございますか?」と問答することで、道長が三条天皇を引きずり下ろそうとすることを、真正面からたしなめる。しかし三条天皇は、息子・敦明親王(阿佐辰美)に請われて、実資の息子とは別の人物を蔵人頭にしてしまう。実資は怒りを込めて「私を二度と頼りにするな!」とつぶやくのだった。
脆さが浮き彫りに…三条天皇の敗因は?
前回の第42回でまひろと絆を確かめあったことで、引退まったなし状態から奇跡の復活を遂げた道長くん。あれから2年の月日が流れ、すっかりパワーがフルチャージできたことで「三条天皇を玉座からおろし奉る」計画が本格的に開始された。 即位以来、類まれに見る交渉能力で道長にバンバン攻撃を仕掛けていった三条天皇だったが、いざディフェンスに回ってみると、いろいろと脆さが浮き彫りに。ここではその敗因を振り返ってみよう。 まず道長が揚げ足を取ってきたのは、内裏で火事が起こったことを「天がお上の政にお怒りである」と、天皇の責任にしたこと。ここで思い出してほしいのが、第32回でまだ東宮の地位にいた三条天皇が「内裏で火事なんて不吉だから、一条天皇(塩野瑛久)は譲位するべき」と公言してしまったことだ。 前回は道長が実行した「一帝二后」制が、天皇の望みを実現させる過去の事例になったのに対して、逆に自分の昔の発言が、道長に譲位の口実を与えるという、思わぬブーメランとなってしまった。 さらにまずかったのは、せっかく息子の出世をダシに味方につけた藤原実資を、約束の反故で怒らせてしまったことだ。しかも代わりに蔵人頭にしたのは、妻と息子にちょっと甘えられただけで安易にポストに付けた、道長と渡り合える見込みがなさそうな若造。 視聴者は、実資が正論攻撃で道長をタジタジにさせた現場を見た直後だけに、実資離脱のダメージの大きさがはっきりとわかった。自分の盾となる人物に恩を売るということをちゃんと頭に入れていたならば、こんな失敗はあり得なかっただろう。 戦略ミスで大きく土台を崩した三条天皇だが、実資が道長に投げかけた「左大臣殿に民の顔なぞ見えておられるのか?」「朝廷の仕事は、なにか起きた時まっとうな判断ができるように構えておくこと」という言葉は、この先道長やその子ども世代に、避けられない課題として突きつけられるはず。さすが俺たちの実資。彼には道長以上に、この貴族社会が衰退する未来と、その原因が見えていたのかもしれない。