道長の逆転劇開始、防御の弱さを突かれた三条天皇の敗因を振りかえる【光る君へ】
愛がなくても満足、道長の嫡妻・倫子の生き方
政治的にはなかなか危ない綱渡りをしている道長だが、今回はもう一つ冷水をぶっかけられるようなことがあった。嫡妻の源倫子(黒木華)が「道長に心から愛している女性が、別にいる」という事実に、ずっと前から気づいていたと明かされたことだ。我々視聴者は、かなり初期の段階から「いや、倫子様絶対気づいてるよ!」「気づいてるってことに気づけよ道長」と勝手にヒヤヒヤしていたが、ここに来てその心配を確信に変えられた瞬間だった。 ただ我々の予想に反して、倫子様は別段嫉妬する様子も見せず、むしろ「自分の娘が、帝になるかもしれない子どもを生んだのは殿のおかげ」と、まひろとはまた別の強い関係性を築けたことに、感謝の気持ちを抱いているという告白を。 確かに自分の娘を入内させる気などなかった倫子にとっては、道長が婿に来たおかげで娘・彰子(見上愛)が国母となり、孫が天皇になる姿を見ることができるわけだから、これはまさに道長に与えられた幸福と言えるだろう。 そこでこれ以上を求めることはなく、「たまには私も気にかけてね」と言うだけに留めるとは。やはり倫子様はまひろとは違うベクトルで聡明かつ強い女性で、彼女と出会えたことは道長にとっても幸運だったはず。一方もう一人の妻・明子(瀧内公美)が少々格下扱いされてしまったのは、その辺の割り切りが足りなくて「愛情も成功も欲しい」と突っ走ってしまったのが、原因の一つのように思える。 そうして次回予告によると、道長の・・・いや、藤原家の摂関政治の最高のピークと言える、あの「このよをば 我がよとぞ思う 望月の・・・」の歌が登場する宴席が描かれる模様。まさに倫子と二人三脚でつかみ取った最高地点への到達だが、最高地点の周りには、下り坂しか残されてないというのが定めというもの。その華やかな「終わりの始まり」がどのようなものになるか、『源氏物語』誕生の瞬間と同じぐらいに注目だ。 ◇ 『光る君へ』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。11月17日放送の第44回「望月の夜に」では、藤原道長が公卿たちを取りまとめて、本格的に三条天皇に譲位を迫っていくとともに、まひろの父・為時(岸谷五朗)がある重大な決意を固めるところが描かれる。 文/吉永美和子