ICT機器を使うほど学力が低下? 新聞を教材にする“NIE教育”の活用法は 佐々木俊尚氏「“なぜ新聞ごとに違う論調になるのか?”を学ぶのが大事」
また、「インターネット時代になって大きいのは、紙からデジタルに変わったことではなく、情報量が爆発的に増えたこと」と指摘。「僕が10代のネットのない時代は、読むものの数が少なかった。だから国語の教科書でもくまなく読んだりしたが、今は読むものがたくさんある。読書が好きで、電子書籍で読んでいる子どもも多くいるわけだ。検索エンジンが出てきたことで調べ物が一瞬でわかり、さらに深堀りできるほうが知的な営みとしては強い。“何を取捨選択するか”という情報リテラシーの話で、それと“デジタルはいかん”という話を一緒にすべきではない」と述べた。 西村氏は「教材や教具をICTで新しくして、わかりやすく生徒に伝えるというのが本当に正しいのかは、疑問に思っている。学ぶ内容は極端に変えずとも、今までのテキストや宿題プリントなどをICT化して、そのやりとりが非常に簡便になっていくというのが最初の到達地点ではないか。いずれデジタルネイティブに合わせた教材は出てくると思うが、今はその前段階の話をすべきだと思っている」とした。
■新聞を教材にする“NIE教育” 佐々木俊尚氏「“なぜ新聞ごとに違う論調になるのか?”を学ぶのが大事」
NIE教育はNewspaper in Eduaction、新聞を教材として活用する活動のこと。新聞のスクラップや新聞記事をもとに1分スピーチ、学習に関連するニュースを探すなどがある。また、小学校の学習指導要領(平成29年告示)でも、「各種の統計資料や新聞、視聴覚教材や教育機器などの教材・教具の適切な活用を図ること」とある。 関口氏は「新聞は紙だけではなく、デジタルもある。信頼できる情報、取材に基づいた情報を使って読み解くことが非常に学習に効果がある、と私は伝えているところだ。文章・写真・データがあり、それを総合的に読み解くのは学習の上ですごく役立つ。読み続けることでその力・精度を上げていくことができる」と主張する。 佐々木氏は「取材というのは、ある一つの事象からある場面を切り取る作業だ。その部位が全体を表しているとは限らない」とした上で、「いろいろな新聞があって、それぞれ切り取る場所が違っていることを認識した上で、“なぜこれだけ違う論調の記事ができるのか?”ということを学ぶのがとても大事だ」と指摘する。