奈良の博物館がパンク状態!収蔵品が増えすぎて『整理のために休館』 同じ農具が180点あるが「1点1点に価値」と学芸員は指摘 資料を保存?廃棄?迫られる判断
奈良県が打ち出した対策“奈良モデル”とは?
こうした状況を受け、奈良県の山下真知事も対応に乗り出しました。 (山下真知事 7月10日)「どういうものは残してどういうものは残さないのか、明確なルールを決めた上で、価値のあるものだけ残して、それ以外のものは廃棄処分も含めて検討せざるを得ないかなと」 7月30日には「民俗資料の収集・保存」の“奈良モデル”を策定する方針を示した山下知事。奈良モデルでは、すべての収蔵品を3D画像などでデータ化して保存します。そのうえで不要なものは市町村や民間の譲渡先を探し、引き取り手が見つからないものは廃棄するとしています。また、収蔵庫の新設については8億円以上かかるため「政策判断として、ない」と説明しました。
保管場所の不足は、全国の博物館で深刻化しています。日本博物館協会の5年前の調査では、全国の約2300の博物館のうち、「収蔵庫が9割以上埋まっている」、または「収蔵庫に入りきらない資料がある」と回答した施設は計約6割にのぼっています。 いずれは多くの博物館で収蔵品を手放したり廃棄したりすることが避けられない状況に、今年7月、民俗資料の研究者でつくる日本民具学会は懸念を表明しました。 【日本民具学会HPより】 『身近な暮らしの道具である民具は、文字記録に残されることの少ない民衆の生活史を雄弁に物語る、他に類を見ない貴重な資料群です。民具を軽視することは、過去から未来へと続く自らの歴史そのものをないがしろにすることと同義であります』
保管ルールを決めた博物館「どういう資料を残すか明確化しないと前進しない」
こうした中、全国に先駆けてすでにルールに則った収蔵品の管理をしている施設があります。栃木県宇都宮市にある県立博物館です。 (栃木県立博物館 篠崎茂雄学芸部長)「とにかくこの部屋全体に資料が置いてあって、歩くスペースもないぐらいたくさん資料がありました」
保管場所の不足が深刻化したことから、2016年にルールを整備。定期的に収蔵品を見直し、価値が失われたものや活用しにくいものは、博物館の資料から外して譲渡や廃棄する除籍処分ができるようにしました。 (篠崎茂雄学芸部長)「博物館全体の職員が協議して、あるいは専門の研究者の意見を聞いた上で、除籍が相当だと判断された場合に除籍する。逆に言うと、除籍のルールはあるけれども簡単に除籍できない」 除籍に踏み込んだ内容のため、当初は批判もあったといいますが、これまでに除籍した資料は10点以下。逆に資料の価値をはっきり示せるようになったことから、2021年には17億円かけて新たな収蔵庫を開設することができました。 (篠崎茂雄学芸部長)「博物館は展示するだけではなく地域の資料を永久に保存する施設。地域の人みんなが何を残していくか考えることも大切かなと。どういう資料を残していくのか明確に定めておかないと前進しないと思います」