奈良の博物館がパンク状態!収蔵品が増えすぎて『整理のために休館』 同じ農具が180点あるが「1点1点に価値」と学芸員は指摘 資料を保存?廃棄?迫られる判断
全国の博物館で収蔵スペースが足りていません。中でも、奈良にある県立民俗博物館では、収蔵品が増えすぎてしまい、整理のために7月から休館する事態となっています。歴史をたどる手がかりとなる資料を廃棄するか保存するか…線引きが難しいところ。判断を迫られる博物館を取材しました。 【写真で見る】中には『腐食』や『虫食い』保存状態が良くない資料も
収蔵庫が“パンク状態”で休館中の奈良県立民俗博物館
奈良県大和郡山市にある県立民俗博物館。農作業に使っていた道具やはた織り機など、主に大正から昭和にかけての民俗資料が展示されています。収蔵庫に案内してもらうと、さらに多くの資料が収められていました。 (奈良県立民俗博物館 高橋史弥学芸員)「こちらが薬箱でございます。『大和の薬売り』というのが奈良県では有名ですが、箱の中に昔の生薬が入っています」 「犂(からすき)」と呼ばれる、牛にひかせて田畑を耕す道具もありました。特に奈良県では盛んに使われていたといいます。ここでは犂だけで約180点を集めています。 (高橋史弥学芸員)「複数点集めて、それがどこで収集されたのかという情報も加えることで、1点1点に価値が出てくる。そして、複数点集めることによって地域の中での農業の全体像がわかってくるので重要です」 奈良の先人たちの暮らしぶりがわかる博物館は、子どもたちの校外学習などで利用されてきましたが、今年7月から休館しています。その理由は、博物館の収蔵庫が“パンク状態”になっているためです。
この博物館では、高度経済成長期の生活様式の急速な変化で伝統的な生活用具が消えていく危機感から、収集に力を入れました。その結果、50年前のオープン時には約7000点だった資料が、今は約4万5000点と6倍に増加しました。 入りきらないものは博物館の外にあるプレハブ倉庫や廃校となった学校の校舎などに仮置きしていますが、空調設備も不十分で、決して保存状態が良いとは言えません。 (高橋史弥学芸員)「(Q資料の虫食いはもらったときから?)もらった時からついていたものなのか、収蔵してからついたものなのかは、まだわかっていません。これから整理していく中で、いつついたものなのか把握しようと思っています」 今の館長や学芸員が赴任した3年前から資料の整理に乗り出しましたが、中には「どこで何に使われていたのか」など、由来がわからないものも多数あることから、一度休館し整理作業に専念することになったのです。