「私が退避しないのは…」 日本人音楽家が爆撃されてもベイルートから脱出しない理由を告白
「高級車がたくさん」
独身の岡島さんは、ベイルート中心部の西側で暮らしており、 「水も電気も問題なく使えて、週末は街に人が溢れています。近くの海側まで出れば、高級車がたくさん走っている。正直言って、エジプトよりも暮らしやすい。現地の人は“イスラエルが狙っているのはヒズボラで、われわれには被害を及ぼさないから心配するな”と言っており、差し迫った危機を感じないのです」 以上、にわかに信じ難い気もするが、中東に詳しい軍事評論家の黒井文太郎氏はこう言う。 「レバノンはイスラム教の各宗派・組織だけでなく、キリスト教徒もいる“モザイク国家”です。首都ベイルートはその縮図となっており、たしかに空爆の対象はヒズボラのいる一角が中心となっている。キリスト教徒や外国人が多く住むエリアは、今のところは危険ではありません」
イスラエルの攻撃範囲が広がる可能性も
とはいえ、 「現在、ヒズボラは他宗派との関係を重視して、他のエリアには立ち入っていませんが、今後、もしかしたらそちらに逃げ込むかもしれない。そうなれば、イスラエルの攻撃範囲が広がる可能性があります。また、ヒズボラ壊滅で国内の力関係が変化した場合、国全体が大混乱に陥ることもあり得ます」(同) ひと昔前は“中東のパリ”と呼ばれ、繁栄を謳歌(おうか)したベイルート。今も岡島さんのような外国人にとっては、暮らしやすい街ではあるのだろう。が、この先は何が起こるか分からない。ただただ何事もないことを祈るばかりだ。
「週刊新潮」2024年10月17日号 掲載
新潮社