大学競争、早慶戦は慶応の圧勝 なぜ、早稲田は苦境に? 大学ジャーナリスト・石渡嶺司
早稲田の大学改革も不発、今後はどうなるのか?
この状況を受け、早稲田大は大学改革を次々と実施します。地方出身で入試成績上位者を優遇する奨学金制度の創設、国際教養学部の新設、政治経済学部国際政治経済学科の新設、第一文学部・第二文学部の改編、理工学部の改編……。 しかし、奨学金制度で利益を受ける人は少なく、学部新設・改編もイメージを一変するほどのインパクトはありませんでした。慶応を逆転する有効な手段にはならなかったのです。 早慶対決は、今後も慶応優位が続くのでしょうか? 早稲田が「逆転」するとしたら、地方入試の実施は鍵になるでしょう。 地方入試は、2014年入試で志願者数日本一となった近畿大、その前年トップの明治大など多くの私大で導入しています。京都の立命館大は2014年度入試での志願者数は8万6935人。うち、近畿内外で分けると近畿4万1354人、近畿外4万4961人と大学所在地のエリア外の方が多くなっており、志願者を集める有力な施策となっています。仮に早稲田大が地方入試を実施した場合、会場数にもよりますが、4万人前後、あるいはそれ以上の志願者数を集め、慶応大への志願者の流出を食い止める手段となる可能性はあります。 もちろん、地方入試を実施したところで「慶応流出」を食い止められるかは別問題です。予備校や高校進路教員など関係者の間では「早慶対決だと当面の間、慶応有利は変わりそうにない」との見解で一致しています。かつての慶応大がSFCを設立したことでイメージを一変させたように、早稲田大も学部新設や教育支援策などでイメージを一変させない限り、慶応優勢の現状は変えられそうにありません。 ------------------ 石渡嶺司(いしわたり・れいじ) 大学ジャーナリスト。大学、就活などを10年以上にわたり取材。著書に『就活のコノヤロー』(光文社新書)、『時間と学費をムダにしない大学選び2015』(共著、中央公論新社)など。