“新人”山本由伸のフォームチェンジに立ち会い「おお」と思わず口にした日本人大打者
ワールドシリーズ第2戦で完璧ともいえる投球を披露した山本由伸投手(ドジャース)。 【写真を見る】山本由伸投手の勇姿 プロの投手として体格に恵まれているとは必ずしもいえない彼のどこにオリックスのスカウトが目を付けたのかについては、前回の記事(山本由伸「めっちゃデカい人にも負ける気はしない」 投球術を聞かれて語気を強めた瞬間)でお伝えした通りである。 4位とはいえドラフト指名したのだからチームがその将来に大きな期待を寄せていたのは間違いない。しかし入団後、山本投手は大きな壁にぶちあたる。しかし一人の柔道整体師との出会いをきっかけに彼の運命は好転していくのだ。 独特のフォームが生まれるきっかけともなったこの出会いについて、『山本由伸 常識を変える投球術』の著者で、スポーツライター・中島大輔氏の記事から見てみよう。(デイリー新潮2023年1月28日配信の記事を再構成しました。年齢などは当時のものです)〈5回連載の第2回〉【中島大輔/スポーツライター】
「自分自身が想像していた期間をはるかに追い越して、すべてがとんとん拍子できているなというのはあります」 担当スカウトとして山本の才能を見抜いた山口和男は、2022年の春季キャンプ時にそう話した。6年前の2016年秋、指名あいさつで「日本を代表するピッチャーになってもらいたい」と伝えたが、これほど早く到達するとは想像できなかったという。 山本は高卒1年目から、才能の片鱗と懸念材料を同時に示した。 春季キャンプを2軍でスタートすると、5月9日のウエスタンリーグの広島戦でプロ初登板を果たしている。8月中旬までに2軍で8試合に登板して2勝0敗、防御率0.27と圧巻の数字を残すと、8月20日のロッテ戦で1軍初登板初先発。計5試合に投げて1勝1敗、防御率5.32でシーズンを終えた。 改めて1年目の起用法を振り返ると、不自然な点に気付くかもしれない。 (1)8月20日登録→8月21日抹消 (2)8月31日登録→9月1日抹消 (3)9月12日登録→9月13日抹消 (4)9月26日登録→9月27日抹消 (5)10月9日登録(同日がチームのシーズン最終戦) 1軍登録された日に先発し、翌日に抹消が繰り返されているのだ。 「球団がサービスタイムをコントロールしていたのではないか」 後に振り返り、そんな指摘がなされたこともあった。「サービスタイム」とはMLB(メジャーリーグ)の用語で、日本で言う「登録日数」のことを指す。 日米ともに、球団の支配下に置かれた選手がフリーエージェント(FA)になって自由に所属先を選べるようになるには、一定の登録日数を満たさなければならない。だからMLBでは選手がFAになるのを遅らせるため、たとえ実力があってもメジャー昇格を遅らせる例が少なくない。 日本では良くも悪くも登録日数に関する意識は球団、選手ともにそこまで過敏ではないが、山本の1年目はあまりにも不自然だったため、上記の疑いが一部で上がったのである。