【五輪女子ゴルフ】熾烈をきわめた日本代表選考…米国と韓国が「2強」でも、「笹生優花」「山下美夢有」には期待できる
数字の上では米国と韓国が「2強」
メダル候補は、どのチームのどの選手かと問われたら、この予想はきわめて難しい。 というのも、各チームの代表選考レースが複雑化、激化したこと、4名構成のチームが皆無になり、最大数が3名構成になったことは、いずれも各選手、各チームの実力差が縮まり、逼迫していることを物語っているからだ。 試合会場となるパリ南西部のル・ゴルフ・ナショナルに馴染みのある選手は、男子でもライダーカップ出場者など、ごく一部に留まっていたが、女子選手はなおさら同コースには馴染みが薄く、誰にとっても初めてに近い舞台での戦いとなる。それゆえ、何がどうなるかは、蓋を開けてみるまでは、まったくわからない。 もっとも、世界ランキングなど、これまでの実績や近年の成績に基づいて眺めれば、メダル候補の筆頭は、やはり米国と言うべきだろう。 世界ランキング1位で東京五輪の金メダリストであるコルダをはじめ、世界ランキング2位のリリア・ヴもいる。実を言えば、ヴはKPMG全米女子プロで山下と並んで2位タイに食い込んでいた。 そして、3番手のローズ・チャンは、まだスタンフォード大学を経てプロ転向したばかりの新鋭だが、すでに世界ランキングは9位。3人ともメダルに近いと言っても過言ではないだろう。 米国と並び3名構成を誇る韓国は、KPMG全米女子プロで優勝したヤンを筆頭に、同大会で山下、ヴと並んでやはり2位タイになったコ・ジンヨンもいる。コは世界ランキング3位、ヤンは5位、3番手のキム・ヒョージュは13位と上位選手揃いだ。 数字の上では、やはり米国と韓国が「2強」と言えるだろう。
勢いのある日本選手2名
しかし、「ホットな選手」という意味では、日本の2選手にも勢いがある。 笹生は全米女子オープン2勝目を挙げたばかりで、山下はKPMG全米女子プロで2位タイになったばかりだ。そして、笹生はフィリピン代表として参加した東京五輪を含め、今回は五輪2度目の出場となる。五輪ゴルフ経験者である笹生が五輪初出場の山下をリードしつつ、励まし合い、支え合えば、パリに日の丸が掲揚されることは決して不可能ではないだろう。 ホスト国・フランスの代表選手は2名。中国、オーストラリア、スペインなど他の大半のチームも2名構成だが、ニュージーランドは1名(リディア・コー)のみだ。2名構成であっても、2人の世界ランキングの平均が70位、80位、中には3桁というチームもある。数字のばらつきは、あまりにも大きい。 しかし、通常のツアー競技と五輪競技は、どちらもストロークプレー個人戦ではあるものの、後者では国旗を掲げるプレッシャーが重くのしかかってくる。そうなれば、往々にして平常心は失われ、実力発揮とはいかなくなる。その傾向、その現象は、メンタルなゲームであるゴルフでは、きわめて強く激しくなる。 だからこそ、何が起こるかは、まったくわからないパリ五輪の女子ゴルフは、激しいメダル争いが予想され、エキサイティングな4日間になるはずである。
舩越園子(ふなこし・そのこ) ゴルフジャーナリスト/武蔵丘短期大学客員教授。東京都出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒。1993年に渡米し、在米ゴルフジャーナリストとして25年間、現地で取材を続けてきた。2019年から拠点を日本へ移し、執筆活動のほか、講演やTV・ラジオにも活躍の場を広げている。『王者たちの素顔』(実業之日本社)、『ゴルフの森』(楓書店)、『才能は有限努力は無限 松山英樹の朴訥力』(東邦出版)など著書訳書多数。1995年以来のタイガー・ウッズ取材の集大成となる最新刊『TIGER WORDS タイガー・ウッズ 復活の言霊』(徳間書店)が好評発売中。 デイリー新潮編集部
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