〈電力供給の減少で料金値上げは必至〉決断迫られる原発再稼働も、顕著な地域差、東日本大震災の負のイメージを払拭せよ!
福島原発事故以降の電力供給体制
現在の電力供給体制は、ガス火力発電の比率が高いこともあり、資源価格の変動や円安の進行から影響を受けやすい。日本のエネルギー政策にとって大きな転換点となったのは、11年3月に起きた東京電力福島第一原発事故である。同事故を受け、原発の安全性に対する疑念が国民の間で強まった。 そして事故の教訓を踏まえ、原発の稼働には、原子力規制委員会が定めた新しい基準を満たすことが必要となり、全ての原子炉が運転の取り止めを余儀なくされた。事故前年の10年、日本の原子力発電規模は米国やフランスに次いで世界第3位であり、原子炉54基が稼働し、15基が建設中・計画中であった。 だが全炉停止の影響により、発電比率に占める原子力発電の割合は10年度の25%から、11年度以降は10%以下まで落ち込んだ。その結果、石炭火力発電(34%)とガス火力発電(31%)の重要性が高まった。
原発の再稼働が進む西日本、遅れる東日本
原子力規制委員会の新規制基準を満たし、再稼働を果たした原子炉は現時点で、11基である。運転中の全ての原子炉が西日本に位置し、炉型は加圧水型軽水炉(PWR)である。 九州電力は15年に川内原発を一早く再稼働させた後、18年に玄海原発の運転にもこぎつけた。関西電力も16年より原発を段階的に再稼働させ、廃止措置対象を除いた原子炉全てを動かしている。 四国電力も16年に伊方原発3号機の再稼働を実現した。中国電力の島根原発2号機は安全対策工事の長期化を理由に、再稼働時期が今年12月になる見通しである。 西日本と対照的に、福島第一原発と同じ炉型、沸騰水型軽水炉(BWR)が多く採用されている東日本では、原発の再稼働実績はない。再稼働の遅れの理由については、福島原発事故の責任を負う東京電力の消極性や、地元自治体からの同意取り付けの難航などが考えられる。 こうした中、世界最大級の原発、柏崎刈羽原発の再稼働をめぐる動向が注目を集めている。同原発6号機および7号機(炉型、改良型沸騰水型軽水炉〈ABWR〉)は、17年12月に新規制基準の審査に合格したが、その後テロ対策上の問題が見つかり、再稼働プロセスが一時停滞した。 東京電力は今年4月に7号機の燃料装荷をようやく完了したものの、地元自治体の認可が得られるかが再稼働へのハードルとして残っている。柏崎刈羽原発が再稼働できれば、火力発電の燃料調達コストは大きく減少し、電気料金の値上り抑制という効果が見込まれる。