トリニトロン、ウォークマン……ソニーが生み出した名品たち
ウォークマンこそがIt's a Sony
「ソニー・プレミアム」2トップのもう一つ。ソニーといえば、やはりウォークマンだろう。インベーダーゲームが大流行し、共通一次試験(センター試験の前身)が始まった1979年、初代ウォークマンが発売された。創業者・井深大が「飛行機の中でも音楽を聴きたい」と要望したのがきっかけだった。 当初、役員の多くは、録音機能が付いていないことから、商品化に反対だったという。だが、当時の会長・盛田昭夫はヒットを確信していた。「マーケット・エデュケーションによるマーケット・クリエーション」を唱え、当時の人気アイドルやタレントに 無料で配布した。ウォークマンを使う彼らの姿が雑誌に取り上げられることで、結果的に若者たちの市場を「教育」し、新しいライフスタイルを「創造」したのである。 「教育」の成果は、発売から2か月目にあらわれた。ウォークマンを片手に街に繰り出した若者たちがそのまま広告塔になり、品切れが続出、社会現象となった。やがてウォークマンはヘッドフォンステレオの〈一般名詞〉になっていく。 87年には、直立不動のサル「チョロ松」が恍惚の表情でウォークマンを聴くCMが話題になった。CM中の「音楽はときどき僕を救う」「音楽は進化した。人はどうですか?」「どこまでいったら未来だろう」というナレーションからも、ソニーのゆるぎない自負が感じとれる。 しかし、「進化」した「音楽」が救ったのはAppleだった。盛田から初代ウォークマンを贈られたスティーブ・ジョブズは、オリジナリティーの豊かさ、完成度の高さに感嘆し、すぐさま分解したという。カセットテープからCD、MDへというウォークマンの進化の先の「未来」は、やがてジョブズが手にすることになった。 (フリー編集者・大迫秀樹)