ONE OK ROCK、藤井 風、Official髭男dism、RADWIMPS……スタジアム/アリーナと会場規模を拡大するアジア公演
果たして音楽に国境はあるのだろうか? 「音楽は言葉を超える」「音楽に国境はない」という言葉は、これまで達成し難いものであるがゆえに一種のスローガンのごとく高らかに掲げられてきた。特に邦楽というジャンルにおいては、日本国内にのみ特化し、いわばガラパゴス的な進化を遂げ、地理的にも文化的にも日本に近いアジアという土地に関してもJ-POPやJ-ROCKが大きな影響力を持つことはあまりなかった。 【画像】豪雨すら演出に変えるONE OK ROCK しかし、ここ数年でYOASOBIやAdo、藤井 風、Creepy Nuts、ONE OK ROCKを筆頭に全世界、そしてとりわけアジアで多くのリスナー/ファンを獲得している。そう、着実にJ-POPやJ-ROCKが国境を越え始めているのだ。これはサブスクリプションサービスやYouTubeの普及により、これまで以上に日本の音楽シーンに光が当たったことで、その魅力が正しく認められ始めた結果であろう。そして日本のアーティストへのアジアにおける注目度の高さは、再生回数や視聴回数といったリアルな手触りのないデジタルな数値を超えて、ライブに集まる数多くのオーディエンスとして立体的に立ち上がってきている。 近年、日本のアーティストがアジア各国での公演を増やしており、そのなかでも特に注目すべきは、会場の規模が拡大している点である。アリーナやスタジアムなど、かつては考えられなかったような規模感で今や多くの日本アーティストがアジアでのライブを成功させている。今回は、いま急速に拡大しつつある日本のアーティストによるアジア公演にフォーカスしていきたい。 まず、ONE OK ROCKは現在『ONE OK ROCK 2024 PREMONITION WORLD TOUR』において、自身過去最大規模のワールドツアーを開催中だ。彼らは9月に味の素スタジアムでの2日間のライブで大成功を収め、その後台湾で最大のキャパシティを誇る高雄国家体育場でも公演を行った。さかのぼること約12年。2012年に行われた『ONE OK ROCK 2012 "Start Walking The World" TOUR』で台湾、韓国、シンガポールのアジア3都市をまわる初の海外ツアーを成功させた彼ら。そのときの会場キャパシティは、ライブハウスクラスだった。以降、欧米圏でのライブ経験も着実に積み上げ、いよいよ今年海外でもスタジアムクラスのライブを単独で開催できるまでに成長したのだ。海外でのライブ活動や映画主題歌のヒットなどを通じて、彼らはアジアのみならず世界中のファンを獲得してきた。その人気がいかにワールドワイドに拡大しているかを象徴するものである。 藤井 風もまた、SNSを駆使した独自のアプローチでアジア全域にファンを拡げている。2024年の『Best of Fujii Kaze 2020-2024 ASIA TOUR』では、シンガポール、マレーシア、タイ、台北、インドネシア、中国、フィリピン、韓国といった都市において、すべてアリーナ級の会場でライブを開催する予定だ。これにはやはりサブスク時代の現代においてヒット曲が国境を越えて一瞬にして伝播していくことに起因するだろう。Spotifyで23の国と地域で1位を獲得した藤井 風の「死ぬのがいいわ」は、TikTokでも驚くべき速度でシェアされ、瞬く間にアジアを中心に新たなファンが生まれていったのだ。時代の風向きにうまく乗ることができたというのもあるとは思うが、なによりも藤井 風はその多様な音楽性と独特な魅力を持つ歌声で、アジアの多くの音楽ファンに支持されている。さらにSNSでは藤井 風本人が英語で発信を行うなど、海外のファンを取り残さないグローバルなコミュニケーションが人気の秘訣なのかもしれない。