村上春樹「ビートルズ、ストーンズ、そしてビーチ・ボーイズは、10代の僕にとっての素敵なバックグラウンド・ミュージックの役割をつとめてくれました」
◆Marianne Faithfull「As Tears Go By」
それではまず初期のヒット曲からいきましょう。「As Tears Go By(涙あふれて)」。この曲はもともとはストーンズの持ち歌ではなく、ミック・ジャガーとキース・リチャーズがマリアンヌ・フェイスフルのために共作し、提供したものです。 1964年、マリアンヌ・フェイスフルの歌でヒットして、ミックとフェイスフルはそれが縁で恋人同士になりました。ストーンズがこの曲を録音したのはその翌年、1965年のことです。とても美しいメロディーを持った曲ですね。マリアンヌ・フェイスフルの歌で聴いてください。 「As Tears Go By」、涙あふれて。 マリアンヌ・フェイスフル、可憐な歌声ですが、やがてドラッグと酒と煙草で身を持ち崩し、声を潰してしまいます。でもがらりと変わったハスキーな声で再起し、独特なスタイルを持つ個性派の歌手となります。僕は1997年に来日した彼女のコンサートに行きましたが、クルト・ワイルの曲ばかりを歌う内容で、心が揺さぶられました。「ああ、彼女もしっかり成長したんだな」と痛感しました。
◆Buckwheat Zydeco「Beast Of Burden」
次は「Beast Of Burden」、1978年にリリースされたアルバム『Some Girls』の中の1曲で、ビルボード誌の8位まで上がりました。僕が個人的に好きな曲の1つです。ザディコ(Zydeco)音楽の代表的シンガー、バックウィート・ザディコが歌います。「Beast Of Burden」。 Beast Of Burdenというのは、重い荷物を運ばされる動物のことですね。使役動物。君にいいように利用されるのはうんざりだ、もうくたくただ、みたいな歌詞です。なんか切実ですよね。 (TOKYO FM「村上RADIO~ローリング・ストーンズ・ソングブック~」2024年10月27日(日)放送より)