<都内で過去最多“不登校生徒”への支援>(2)全国初の「チャレンジクラス」とは?
東京都内で「不登校」となっている児童・生徒は小中学校合わせて3万1726人(2023年度)で、11年連続で増加し、過去最多の人数となりました。これは、調査対象となっている学校数で割ると、1校当たり平均で16人という数値になります。子どもたちの将来のために国や東京都が行っている支援の取り組みを取材しました。 「チャレンジクラス」は、全国で初めて東京都が2024年度から実施している事業です。不登校生徒と一般の生徒が同じ中学校舎の中で勉強し、1学年1クラス編成しています。一般の学校と同様、時間割に沿って教員が授業を行っています。都内の公立中学校10校に設置されていて、現在は23区に5校、多摩地域に5校あります。今回は墨田区立桜堤中学校を取材しました。 チャレンジクラスには1限目と6限目がありません。登下校の時間をずらすことで、一般の生徒と対面しないよう配慮されています。また、一般の生徒が利用する下駄箱とチャレンジクラスの生徒の下駄箱を分けているほか、校内を歩くルートも別々にしています。この日も午前9時すぎ、一般の生徒が授業を受けている中、正面玄関とは違うチャレンジクラス用の入り口から登校していく生徒たちの姿がありました。 授業の進め方にも工夫があります。各学年にクラスが1つずつあり、不登校の生徒によって学習の進み具合が違う場合もあるため、テキストや課題は生徒それぞれに合ったものを用意しています。さらに気軽に授業に参加できるよう、オンライン授業を常に展開しています。 中学3年生の男子生徒は大人数でのコミュニケーションに苦手意識を感じ、中学1年生の春から不登校だったといいます。男子生徒は「人間関係でいろいろあって疲れてしまって、一回学校に行くのとか人間関係をつくるのとかをやめようかなと思った」といいます。しかし今年4月にチャレンジクラスが設置されたことで、今では学校をほとんど休まず通えるようになったということです。男子生徒は「ちゃんと授業もあるし楽しくて毎日通いやすい。先生たちもみんな気にかけてくれたり明るくて、通うのが楽しい」と話します。そして「先生たちとの距離が近いところがすごくいい。先生たちが面白くて、やってみようかなという気になる」と笑顔を見せました。 同学年の一般生徒たちから遅れていた勉強もチャレンジクラスに通い始めたことで、今ではほとんど同じカリキュラムで学べるようになったということです。その変化を家族も実感していました。男子生徒の母親は「一番は笑顔が増えたこと。あとは同年代の友達と話ができるようになった。チャレンジクラスがあってありがたい」と語っていました。 <不登校生徒への必要な支援とは…> 「教育支援センター」と「チャレンジクラス」の2つの取り組みは、不登校の児童・生徒のさまざまな学ぶ場所、機会のニーズに応えているといえそうです。 学びの形の多様性という良い面がある一方で、まだ課題はあります。取材の中で「一般生徒に比べて進学の幅が狭くなってしまうのでは」という生徒の声もありました。文科省によりますと、不登校の生徒の高校進学率は85.1%ほどで、一般生徒の98.8%に比べると低いことが分かっています。こうした現状に、「不登校ジャーナリスト」の石井しこうさんは「毎日登校しなくても勉強についていける環境づくり」と「柔軟な成績評価できる体制が重要」と指摘しています。 こうしたことから、今後はどのように「進学につなげるか」考えていくことも必要となっていきそうです。