「わき毛、かわいくない?」体毛はいつから恥ずかしいものに 「剃るべき」の呪い解くラッパー
わき毛の歴史 ないほうが不自然だった
「個人の自由」が尊重される時代になりつつあるが、それでも「女性の体毛はないほうがいい」「男性は会社に行くときにひげを剃る」といった価値観は根強い。本来、体毛が生えるのは自然なことのはず。なぜそんな考えが生まれたのか。 国際日本文化研究センターの所長で、日本の風俗史に詳しい井上章一氏はこう話す。 「一般の女性がわき毛の処理を始めたのは1960~70年代からと最近のことです。しかし、今ほど神経質ではなかった。それ以前は、わき毛がないと無毛症だと思われるか、当時はまだ偏見があった水商売の女性だと思われるほどでした」 体毛処理自体は江戸時代にも行われていたことが確認されている。それが女性の間で一般化し、「わき毛=恥ずかしい」という考えが浸透したのはさらに最近のことだ。 体毛への考え方が変わるきっかけについて、井上氏は明確な答えはわからないとしつつ、西洋文化やハリウッド女優、ノースリーブ、入浴頻度の増加、そして美容産業が発展し、体毛を処理する人口を増やそうとしたことなどが影響したのではないかと推測する。 では今後、体毛処理の常識は変わっていくのか。 「一度浸透してしまった価値観を変えるのは簡単ではありません。たとえば、大正時代は葬式に振り袖で参列することもありました。ですが今、黒以外で参列すれば非常識か変わった人だと思われてしまいますよね。ただ、生活の身繕いについて、個人の自由だという考え方が浸透してきている時代ではあります。それは素晴らしいことだと私は思います。今は除毛が当たり前だからこそ、毛を生やすことが意思表示として受け取られるでしょう」
彼氏にわき毛を否定され号泣
あっこゴリラは、中学生や高校生と話す機会もある。その中で、「あっこさんは正しくて強くて、私はそうなれない」と言われることが何度かあった。そのたびに伝えることの難しさを痛感するという。 「私が正解ってことではないんですよ。私はこういうやり方を、自分が調子良くいるために選んだだけ。別に当たり前に抗う必要もないし、お前はお前でいろよって思う」 ただ、「肌が荒れる」「面倒」など、剃りたくない理由があっても、「当たり前」があるために、剃らなくてはいけないと思ってしまう人も少なくない。 「それはわかる。自我が形成されるまでの戦いは、マジで大変。私は自我の形成が遅くてすごい苦労したので、他人事じゃないなと思う。やりたいけどやれない、自分をやらせないようにしているものの正体をひもといていくには時間がかかるけど、いろんなものが助けてくれる。映画や本、カルチャーに触れることをお勧めしたいです」
ラップやヒップホップ、フェミニズム……多くのカルチャーに触れ、「救われた」彼女は、どこまでも自分にまっすぐで、かわいいに貪欲だ。 「でも、彼氏に『本当にわき毛やめなよ』とか言われたときは、号泣した。誰に何言われてもいいけど何でお前がわかってくんないの?って。だけど途中でわかってくれなくてもいいやってなった。私も合わせないし、向こうは向こうで俺はこう思うけどまあ好きにすればっていう感じ。それで仲良くやってます。だから共存はできるんですよ、違う人間でも。当たり前だけど」