AIと原子力発電は切っても切れない関係にある…?
電力が足りない…。 世界で増大するエネルギー需要。それに対応するため、いま原子力エネルギーへの注目が高まりつつあります。新技術で原子力発電が抱えてきた課題に対処しつつ、どんどん新たな原子力発電所が稼働するようになる未来? テック業界の主導で、そんな流れさえ、できつつあるようなのですが、懸念されるのは安全性であることに変わりはありません。
テック業界が原子力に熱視線
いま米国では、次々とIT大手が原子力エネルギーに投資しています。たとえば、Microsoft(マイクロソフト)は、スリーマイル島の原子力発電所を再稼働させ、データセンターへの電力供給に充てる契約を結んだことを発表。Amazon(アマゾン)は、小型モジュール炉を新開発すべく、巨額の投資計画をアナウンスしています。さらに、Google(グーグル)も、やはり新型の小型モジュール炉を採用する新原子力発電所からの電力供給プランを明かしました。 テック業界と原子力エネルギーの関連性。ここまで高まってきている理由は、とにかくAIにあるようです。このところAIについて耳にしない日はないくらい、ドシドシと存在感を増しているものの、とにかく必要な電力がハンパない。 一気に需要を満たす手段として、原子力エネルギーへ白羽の矢がたっているというわけですね。
原子力エネルギーの抱える課題
にわかに北米では、原子力エネルギーを推す声が高まってはいるものの、まだ世界的にはイケイケドンドンという感じではありません。チェルノブイリの原発事故が、世界に原子力発電の危険性を知らせることになりました。でも、本格的に原子力発電に否定的な動きがスタートしたのは、2011年の東日本大震災の津波で福島第一原発事故が発生してからといわれています。 とりわけ欧州で、脱原子力エネルギーの流れは加速中。すでにドイツでは、原子力発電所は全廃されました。イタリアでは、もっと徹底されており、チェルノブイリの原発事故の後、早々と脱原発を決めて、その後も新たな原子力発電所は一切建設しない姿勢が貫かれています。石油や石炭を使う火力発電に比べ、炭素を排出しないという面ではクリーンなエネルギーだともいわれる原子力。しかしながら、いざ事故が起きてしまったときの被害の大きさが、多くの国で脱原子力という風潮を高めてきたことは否めません。 また、安全面以外でも、原子力発電には課題があります。米国内では、コストの問題から、建設に着手したものの稼働にいたらなかったり、当初の予算を大幅に上回って大赤字の原子力発電所が大問題に。建設は膨大な時間がかかり、トンでもない資金を必要とする原子力発電所は、安全性という課題を別にしても、敬遠される流れが強まっていました。 そこでいま、こうした課題を解決し、従来より低コストでコンパクトな新原子力発電所をつくるコンセプトが掲げられているというわけです。そのすべてはAI需要をまかなうためでもあるという現実。 本当に必要なのか? その議論はさておき、どこまで安全性をも確保した新たな原子力エネルギーが世界を変えられるのか? 答えが出るのは、まだ少し先のようです。
湯木進悟