白井元調教師と学ぶ血統学【162】連載もクライマックス!凱旋門賞&ブリーダーズカップで見えた日本馬の〝課題〟
BCクラシック3着のフォーエバーヤングは…
松浪 では、話題をガラリと変えてブリーダーズカップのほうを。クラシックのフォーエバーヤングは頑張りましたが、シエラレオーネの3着が精一杯でした。 白井 いや、あれは大したもんと思うで。BCクラシックで人気して。それで崩れてないんやから。 松浪 フォーエバーヤングはディープインパクトやオルフェーヴルみたいな、ちょっと規格外の馬かもしれませんね。それくらいのレベルの馬なので、相応の結果を出し続けていると僕は感じています。個人的には今年の最優秀ダート馬に1票を投じたい…ところですが、理解してもらえないでしょうね(苦笑)。 白井 松浪君の指摘は核心を突いていると思うわ。規格外の馬を連れて行くから、それに見合う結果が出る。凱旋門賞にも同じことが言えると思うね。いくら適性があると言っても、力が足りてなければ勝てるはずもない。 松浪 フォーエバーヤングは来年以降も期待できそうですね。しかしながら、BC全体で考えるとやっぱりというか、難しいなと改めて思いました。 白井 特にダートのスプリントな。全然スピードが違う。 松浪 あれだけの速いペースを持ったままで走る。特に違うと感じたのが最初の2ハロンです。ゲートの速さ、それ以降のダッシュ力、前半部分のスピードがまるで違いました。 白井 その部分で勝負できる馬でないと米国のスプリント戦では通用せんよ。最も高い壁と思うね。 松浪 ローシャムパークが際どい2着に入ったように、BCターフあたりは勝負できる手応えが持てましたね。まあ、日本馬の強いカテゴリーではありますけど。 白井 でも、最も大事な部分は開催場所と思うね。東海岸では状態面で難しい。 松浪 そうですね。西海岸の開催であることが、日本馬好走のマスト条件になりそうです。まあ、東海岸では遠征そのものが減るでしょうけど。 白井 厳しいことを言うようやけど、今年は勝負にならない馬が遠征し過ぎたと思うね。猫も杓子も…という感じがしたもん。 松浪 海外での成功はスタッフの経験値を上げることが大切とも言いますし、遠征が無駄とは思いませんが、これなら国内で走ったほうが…という馬もいたことは確かです。 白井 ブリーダーズカップは米国競馬の最高峰やもん。ここを攻略することは簡単でないし、ダートは特にそう思うわ。現役時代のサンデーサイレンスのように、コーナーで加速できる馬でないとな。小回りコースは難しいんやから。 松浪 それだけにフォーエバーヤングの頑張りは評価すべきと僕は思いました。最優秀ダート馬への投票…やっぱり許されないですかね(苦笑)。 ☆白井寿昭(しらい・としあき)1945年生まれ。広島県呉市に生まれ、大阪で育つ。68年に上田武司厩舎の厩務員となり、78年にJRA調教師免許を取得。79年に開業した。95年のオークスをサンデーサイレンス産駒のダンスパートナーで制してGⅠ初勝利。98年日本ダービーなど、GⅠ4勝を挙げたスペシャルウィーク、国内外でGⅠを6勝したアグネスデジタルなどの名馬を管理した。2015年、定年により調教師を引退。現在は競馬評論家として活動している。
松浪 大樹