JX金属、純銅に匹敵する熱・電気伝導性の「3Dプリンター用銅粉」開発
JX金属は12日、独自の表面処理を施した金属3Dプリンター用銅粉を開発したと発表した。純銅に匹敵する熱伝導性・電気伝導性を持つとともに、複雑な形状の造形を可能にした。 レーザーパウダーベッド方式の金属3Dプリンターで一般的な出力である400ワット、500ワットの近赤外レーザーを使用して高密度の造形に成功し、純銅と同等の電気伝導率を持つ造形物の作製を可能にした。また、造形後の熱処理が不要なため、銅合金粉を使用した場合に比べて工程を簡略化でき、ユーザーの生産性向上とコスト削減に貢献できる。今後はサンプル提供を順次行い、拡販に向けた体制を構築する。 同製品は、出資先企業である英アロイド社と共同開発した。銅粉を用いた3Dプリンティングは、小型化・軽量化、納期の短縮といった効果と性能向上が見込まれることから、ロケットエンジンの冷却機構や誘導加熱用コイルをはじめとしてさまざまな分野で採用が期待されている。ただ、純銅は3Dプリンターの熱源で一般的に使われている近赤外レーザーをほとんど吸収しない、熱伝導率が高いため熱が逃げやすい課題があり、高密度造形には高出力レーザーを採用した金属3Dプリンターが必要となっていた。また、純銅粉の代替として銅合金粉を用いた場合は、造形後に電気伝導率などを向上させるための熱処理を施しても純銅に比べて9割以下の電気伝導率しか得られないことや、熱処理のための追加の設備投資や工程数の増加によるコスト上昇も課題だった。「切削・溶接加工していた形状を3Dプリンターで造形できるようになれば、トータルコストや納期の短縮につながる可能性がある」(同社担当者)と拡販を目指す考えだ。