スイスの元プライベートバンカーが注目する米ドル債券7選…「なぜ富裕層は今債券を買うのか」2つの理由
富裕層の資産運用のサポートを行ってきた世古口俊介氏は、「米ドル債券が世界の富裕層のスタンダードな資産運用である」と話す。円安が進むいまでも米ドル債券を買うべき理由や注目銘柄について、世古口氏が語る。 ※本書は世古口俊介著『富裕層のための米ドル債券投資戦略(総合法令出版)』から抜粋・編集したものです。
円安でも米ドル債券を勧める理由
米ドル債券において利回りとともに重要なのが米ドル円の為替レートです。米ドル債券に投資したときより米ドル高・円安になれば為替の利益が出ていることになり、逆に投資したときから米ドル安・円高になれば為替の損失が出ているということになります。 残存期間(債券に投資した元本が現金で返ってくるまでの期間)が終わるまで持ちきる前提なら、利回りは投資するタイミングで確定しますが、為替は元本が返ってくるまでどうなるかわからないので、投資後も注視が必要になります。 2024年11月の米ドル円は1米ドル=151円程度です。これは歴史的な米ドル高・円安といわれています。米ドル円=151円という為替水準は過去をさかのぼると1990年、実に34年ぶりの米ドル高・円安水準なのです。 図の米ドル円の過去35年の推移を平均で考えると、だいたい110円から120円くらいが平均値になるでしょう。今の為替レートで米ドル債券に投資する場合は、投資したあとに米ドル安・円高にならないか心配な人が多いと思います。 しかし、それでも米ドル高・円安が進んだ2022年以降に、富裕層の米ドル債券への投資が増加している2つの理由を説明します。 理由① 利回りが高いから 直近、米10年国債利回りが高まり、米ドル債券全体の利回りが上がっているので、米ドル高・円安があまり気にならないという理由です。米ドル円の為替で見ると割高だが、利回りでは有利なので総合的に考えるとトントンだと思っている方が多いわけです。トントンなら投資の絶好のタイミングとはいえず、なぜ富裕層の投資が増えているのかわからないと思われるかもしれません。 しかし、このトントンを絶好のタイミングにする投資方法が1つあります。それは残存期間が長い米ドル債券に投資することです。残存期間が10年以上の長い債券であれば高い利回りを長期間、享受できるので、そのメリットで米ドルの割高を打ち消すイメージです。 理由② もっと円安になると考えている 中長期的には、さらに米ドル高・円安になると考えている富裕層は、今の米ドル円の水準でもためらいなく米ドル債券に投資します。中長期的な視点を持った富裕層は短期的なアメリカと日本の金利差だけでなく、日本の構造的な問題に注目しています。 例えば、前述のように日本の借金の多さは先進国の中でもトップを独走しています。このままでは、いずれギリシャのように財政難になり、通貨が暴落するかもしれないと考える富裕層もいれば、日本人の純金融資産の97%が円資産で、新NISAなどをきっかけに外貨投資が進み、それが米ドル高・円安に拍車をかけると考える富裕層もいます。 構造的な問題が多い日本の経済成長に期待していない富裕層が大半を占める中で、現在の米ドル高・円安は継続し、中長期的にはさらに円安になると考えているわけです。この2つが現在の米ドル高・円安でも富裕層の米ドル債券投資が増加している理由です