スイスの元プライベートバンカーが注目する米ドル債券7選…「なぜ富裕層は今債券を買うのか」2つの理由
「いつ投資するか」を悩むだけ無駄
いつ米ドル債券に投資すればいいか、利回りや米ドル円の為替を見ながらタイミングを迷っている富裕層の方もたくさんいます。しかし、それは無駄な悩みの可能性が高いと私は考えています。 理由は米ドル債券の利回りと米ドル円が基本的には連動するからです。米ドル債券の利回りが上がれば米ドル高・円安となり、米ドル債券の利回りが下がれば米ドル安・円高になることが多いです。つまり、米ドル債券の利回りが有利なときは米ドル円の為替で不利となりますし、利回りが不利なときは為替が有利というトレードオフの関係が成り立っています。 迷っている時間が無駄なので早く投資して利回りを得たほうがいいというわけです。
信用危機こそチャンス
世間の常識を覆すことが起こると、みんなが不安になり「信用危機」が起こります。米ドル債券はお金の貸し借りという信用で成り立っているので、信用危機が起きると債券が投げ売りされ、債券価格が急落し利回りが上昇するバーゲンセール状態になります。 信用危機のバーゲンセール状態のときは、米ドル債券の絶好の投資チャンスであることが多いです。信用危機は大小あるものの、数年から10年に1度くらいは起こります。例えば2023年の金融不安、2020年のコロナショック、2008年のリーマンショック、2000年のITバブル崩壊などが代表的なものでしょう。 このような信用危機のときは会社の倒産リスクが高くなるので、格付けが低い社債ほど債券利回りが上昇しています。 みんなが不安になっていて価格も下がっているので少し怖いかもしれませんが、危機が落ち着けば債券価格も元に戻るので、勇気を持って投資すると高利回りの恩恵を受けられ、最終的に良い結果になることがほとんどです。 信用危機は待っていてもなかなか来ないので、もし危機のタイミングに遭遇したら幸運と思い、ありがたく高利回りを頂戴しましょう。
注目米ドル債券7選
最後に実際に富裕層に人気の米ドル債券(米国債・普通社債)の具体的な銘柄の一例をご紹介します。 図の銘柄リストは、米国債・普通社債を合わせて7銘柄のリストにしています。証券会社は実際には100銘柄以上の債券を取り扱っていますが、富裕層が選びやすいようにニーズに合った債券だけをピックアップし、銘柄候補リストを作って提案するのが一般的です。 No.1とNo.2は米国債です。残存期間は15.1年と29.8年の債券になります。米国債はどこの証券会社もラインナップが豊富で、だいたいの残存期間の米国債が存在しています。米国債は格付けAA +と非常に高く、信用力が高い債券なので、残存期間が長い債券を選ぶ富裕層が多いです。 2024年4月時点の利回りは、だいたいどの期間の米国債も4%前後になります。安全性を最優先に考える富裕層に一番人気なのは間違いなく米国債でしょう。 No.3のソフトバンクGの社債も人気です。今回の銘柄リストの中で唯一の低格付け債になるので他の債券よりリスクが高いと見なされていますが、会社の知名度や規模の大きさから安心感が高いと考える人も多く、何より5.7%と高い利回りを得られるという理由で投資する方が多いです。 有名な孫正義社長が経営する会社なので、彼をリスペクトする経営者や富裕層には特に人気の債券です。 No.4の三井住友FGも日本のメガバンクの一角という安心感からとても人気です。三菱UFJFGやみずほFGも米ドル債券を発行しており、日本の銀行への信頼が厚い富裕層には特に人気が高いです。 No.5のオラクルはアメリカの大手IT企業です。日本ではそこまで知名度が高くないかもしれませんが、時価総額50兆円の大企業です。日本でオラクルの時価総額を超えている会社はトヨタ自動車だけです(2024年4月時点)。その巨大なIT企業が発行していて5.2%というそれなりに高い利回りを得られるということで人気なのです。 No.6のウォルト・ディズニーは説明不要かもしれませんが、ディズニーランドの大元の会社です。格付けもA-と高く、知名度とあいまって米ドル債券の人気も非常に高いです。 No.7のアップルも説明不要の有名企業です。格付けも高く米国債と同水準です。アップルの米ドル債券なら安心して長期で持っていられるという方が多く、表のような35.9年という特に期間が長い債券が人気です。
世古口俊介