パラリンピックのメダリストも参加するハンドドライブ講習会とは?「夏のトレーニングにも有効かも」高速での空間認知能力を鍛えるのにバッチリです
講習はスラロームとブレーキングの練習からスタート
そのHDRSでは、まずスラロームおよびブレーキングの練習からスタートとなります。きちんと乗車姿勢を取れていて、さらにしっかりと車両の操作ができるかを確認します。ハンドルの位置やシート位置、シートベルトといった各項目をきっちり正しい位置で乗車しているのか。機能障がいを有している人ならではの最適なドライビングポジションを取れるようになった後、サーキットの先導走行を行い、昼休みを挟み30分×3回のサーキットの周回走行が設定されています。 通常一般公道では経験することのない操作を、サーキットという安全な場所で実際に体験することで、いざというときにきちんと車両の操作ができるようになるということです。 障がい者限定のスクールではないので、一般健常者も参加が可能。ただ、参加費用は障がい者は健常者に比べ大いに割引されるのも特徴のひとつです。 車両は基本的に参加者自身のクルマを持ち込んで走行することになりますが、アクティブクラッチやグイドシンプレックスといった手動装置を組み込んだレース用車両の日産「マーチ」やホンダ「N-ONE」も持ち込まれており、これらの車両をレンタルすることも可能ですし、これらのハンドドライブ車両で走行する青木選手の助手席同乗走行も可能です。
チェアスキー選手の森井大輝氏が参加
今回も少人数での体験会となりましたが、その中で今回初めてHDRSに参加となった森井大輝さんは、パラリンピックでメダル獲得経験もあるチェアスキー選手です。高校2年生のときに交通事故で脊髄を損傷し、1998年に開催された長野パラリンピックをきっかけにチェアスキーを始め、以後2002年のソルトレイクシティから2018年の平昌まで5度パラリンピックに出場し、銀メダル4度、銅メダルを1度獲得。障がい者アルペンスキーワールドカップでは3度の総合優勝を果たしており、世界選手権では4度優勝もしています。 チェアスキー(シットスキー)とはシートの下にスキー板を装着し、アウトリガー(ストックの先に小さなスキー板を装着したモノ)を使って滑る競技となります。冬季パラリンピックは1988年から正式種目となって、回転、大回転、スーパー大回転 、滑降の4種目の競技が行われています。 現在トヨタ自動車に勤務する森井さん、サーキットでの走行経験もあるのかと思いきや、富士スピードウェイや袖ヶ浦フォレストレースウェイで走行したことがある程度とのことでした。今回のHDRSで、本格的に走り込むことができたと喜んでいました。 イベント終了後、森井さんは次のように振り返ります。 「スピンをしかけてドキッとしましたが、クルマが高速域でどんな挙動を起こすのか経験をしておく必要性を感じました。一般公道でスピンが起きてしまったとき、こういった経験があるのとないのでは大きな違いになるでしょうし、経験をしておくことが安全運転にもつながるだろうとも思いました。今日のサーキットでの走行は非常に有意義な時間になりました。もちろん、何よりも楽しかったのですが、思い切って走ることができるうえに、周回を重ねることでミスを次の周回で修正できるので、スキーの反復練習と同じように修正を重ねて行くこともできますし、速く走るライン取りを探っていったり……これはトレーニングにも使えるなぁということに気が付きました。夏場のトレーニングというと、スイスとか南半球の国に出かけていって行っているのですが、このサーキット走行なら、高速での空間認知能力を鍛えるのにもいいと感じました。今日は本当に良いトレーニングになりました」