社会学の歴史の「3つの山」で、最も目立つ山にいた男
社会学は19世紀に生まれた学問です。その200年程の歴史には、大きく「3つの山」があった、と社会学者の大澤真幸さんは語ります。 【画像】ヴェーバーと同じように「憂鬱の時代」に苦しんだ知性たち 【本記事は、大澤真幸『社会学史』を抜粋・編集したものです。】
社会学史の「3つの山」
社会学の歴史を振り返ると、大きく3つの山があります。 まず、19世紀の誕生前後に1つ。 次に、19世紀から20世紀への世紀転換期、第一次世界大戦の直前ぐらいに大きな山があります。 それから最後の山が、第二次大戦後、特に1960年代以降の現在にまで至る流れです。 その3つの山の中でも一番華々しく、最も目立つのは2番目の山です。この時期に活躍した社会学者たちが、クオリティにおいても量的にも最も優れています。 実は、これは社会学だけではない。考えてみると、すべての学問がそうなっているのです。 まず哲学がそうです。ハイデガー(Martin Heidegger,1889-1976)などが出てくるのが第一次世界大戦と第二次世界大戦のちょうど中間ぐらい。その後にもたくさんの哲学者が出てきたし、読まれてもいるけれど、200年ぐらいの距離を置いてみれば、ハイデガーより偉大な人は出ていないと思います。だから、哲学の歴史を見ても、第一次世界大戦前後が一つのピークになっている。 自然科学もそうです。これは以前、『量子の社会哲学』という本で書いたことですが、物理学が本当の意味でのブレイクスルーをしたのが、まさに1900年代の初頭から第一次世界大戦前後なのです。 社会学だけではなくて、多くの学問が十九世紀の末から二十世紀の初頭に大きな転換期というか、ピークを迎えている。ロウソクが消える前と言ったら言い過ぎかもしれないけれど、猛烈に燃え盛る時期なんですね。社会学もそうです。その燃え盛った社会学者の中でも一番の大物がマックス・ヴェーバーです。 * 【つづきの「ある大物社会学者の「病」と「仕事」はどんな関係にあったのか」では、マックス・ヴェーバーの病と仕事について詳しく語られます! 】
大澤 真幸(社会学者)