先輩からのエール/3 九州三菱自動車・隈本高晟選手(25) がんがん攻めて行って /福岡
<第91回選抜高校野球> ◇隈本高晟(たかまさ)選手 「きつかったけれど、卒業してみれば中身の濃い3年間だった。体力がついたし、精神的にも強くなった」と筑陽学園時代を振り返る。 練習は緊張感があり、一球に対してとにかく厳しかった。きっちりと6時間目まで授業を終えてから練習するなど、勉強と部活動の両立が求められた生活は、疲れで「ご飯を食べながら寝てしまうこともあった」。最後の夏の県予選は3番、一塁手で出場したが、甲子園に届かなかった。 母校のグラウンドが目と鼻の先にある九州三菱自動車に、2016年に入社。ここで、厳しかった高校時代の「両立」が生きていると感じる。同社は午前中に野球の練習をし、午後からは多くの選手が各店舗で営業の仕事をこなす。自身も一般社員と同様に車の販売の仕事をしている。 多忙な日々でも、昨秋の九州地区大会準決勝の大分戦は、母校の試合観戦にリブワーク藤崎台球場(熊本市)まで足を運んだ。自身も九州地区大会で立った舞台だが、創成館(長崎)に敗れた。「後輩たちは楽しそうにプレーしていた」。因縁の球場で延長十二回の末に勝利し、初のセンバツ出場をたぐり寄せた瞬間を見つめた。 試合後は江口祐司監督(56)に「おめでとうございます」と祝辞を述べ、年末にはOB約10人で練習場を訪れた。「筑陽学園はどちらかと言えば守備のチーム。しっかりと守って攻撃につなげ、接戦を粘り強く戦ってほしい」と甲子園での活躍に期待を寄せる。 後輩たちのメッセージに「攻」と一文字を書き込んだ。17年の第88回都市対抗野球大会では、東京ドームでトヨタ自動車と延長十二回タイブレークまでもつれる熱戦を繰り広げた。足がすくむような大勢の観客の中、受け身の気持ちでなく、攻めの姿勢でプレーする重要性を感じた。 「守備でも攻撃でも受け身ではなく、がんがん攻めて行ってほしい。見ている人から自然と拍手が湧くような、そういう野球をしてほしい」。甲子園で躍動する選手たちの姿を信じ、エールを送る。 〔福岡都市圏版〕