メタ認知とは?ビジネスパーソンが高めるメリットと鍛え方のポイント
最近、ビジネスにおいて耳にする機会が増えた「メタ認知」という言葉。メタ認知能力を高めれば、ビジネスにおいて判断力が高まったり、物事に臨機応変に対応できるようになったりすると言われています。 そもそもメタ認知とは何なのか、そして身につけるメリットとトレーニング方法などについて、著書『鋼のメンタルを手に入れる ゴリラ式メタ認知トレーニング』が話題でバーチャルでも活躍する精神科医、いっちーさんに伺いました。
「メタ認知」とは?
メタ認知とは、「認知についての認知」などと言われますが、簡単に言えば「自分のことを客観的に見る力」のことを指します。 人は誰しも、その人なりの固定観念や偏見を持っています。それ自体は当たり前のことなのですが、そのせいで自分自身のことをも見誤ってしまうことがあります。固定観念や偏見を取っ払い、客観的かつフラットに見て、今の自分を知ることがメタ認知です。 こう説明すると難しく聞こえるかもしれませんが、皆、無意識のうちに日常でメタ認知を使っています。 例えば、「自分は人前で話すのが苦手だから、事前にしっかり原稿を作り話すことを決めておこう」とか、「自分は忘れっぽいから、資料の重要な部分に付箋を貼って後で読み返そう」など。このように、過去の経験から自分の能力を評価して行動したり、未来の自分のために計画を立てて行動を決めたりするのもメタ認知です。 そして、メタ認知のために使われる知識や経験のことを「メタ認知的知識」と言い、その知識をもとに自分の未来を日々修正しようとする活動を「メタ認知的活動」と言います。 前述の例で言えば、「人前で話すのが苦手」「忘れっぽい」というのは、過去の知識や経験によるメタ認知的知識であり、「原稿を作って話すことを決める」「付箋を貼って読み返す」がメタ認知的活動となります。
ビジネスパーソンがメタ認知を高めるメリット
メタ認知は、仕事力を上げるスキルの一つとして認識されています。例えば、ビジネスにおいて以下のようなメリットが考えられます。 ◆周りに左右されず、進むべき道を選択できるようになる ビジネスやキャリアは選択の連続。どの道が正しいのか、どの道を選ぶべきなのか、選択に迷うこともあると思います。 そんなとき、メタ認知を働かせて自分を客観視すれば、他人の意見に左右されたり、一時的な感情や気分に惑わされたりしなくなり、「いま進むべき道」を選択することができます。 ◆コミュニケーションが円滑になり信頼関係が築きやすくなる メタ認知スキルが高い人は、自分が周りからどのように見られているのか、そして何を求められているのか察知するのが得意です。そのため、相手が求めるものをいち早く提供できたり、先回りして行動できたりするというメリットがあります。場合によっては、相手のニーズに合わせて自身の行動を修正することもできるので、より円滑なコミュニケーションが取れるようになり、信頼関係も築きやすくなります。 ◆即断即決し、失敗を恐れずチャレンジできる メタ認知が得意な人は、自分はどういう人間で、いま自分には何が必要なのかを理解しているので、次にやるべきことがほぼ決まっています。したがって、リスクや失敗を恐れずチャレンジすることができます。 そういう人は、たとえ失敗したり壁にぶつかったりしても、スパっと頭を切り替えて悩むことなく次の行動に移ることができるので、ポジティブな循環が生まれやすいという特徴があります。 ◆ロジカルシンキングの精度が上がる ビジネスの必須スキルとされるロジカルシンキングにも、メタ認知は重要であると言われています。 ロジカルシンキングとは、物事を体系立てて考える思考法ですが、自分の論拠を客観視し、「誰が見てもわかりやすく、納得できるように説明する」という考え方が基本となっています。そのためには、メタ認知による「第三者視点」が必要不可欠。どうすればもっとわかりやすく伝えられるか?説明に足るエビデンスは何か?などを第三者視点で分析することで、自分の考えやアイディアをより論理的に組み立て、伝えることができます。 ◆感情制御がしやすく誠実な立ち回りができる メタ認知スキルが高いと、一歩引いて物事を大局的に見られるようになります。今自分が取った行動が、将来どのように自分に返ってくるのか想像できるので、トラブルがあっても慌てないし、理不尽な指摘を受けてもカッとすることもなくなります。たとえ自分のほうが正しくても、「今は折れたほうがメリットが大きい」と思えれば引き下がるなど、状況に合わせて誠実に立ち回れるので、周囲からの人望も厚くなる傾向にあります。