日本最大の刑務所で見た受刑者に「やさしい」取組とは?最高齢は94歳…進む塀の中の「高齢化」と「処遇改善」
京王線府中駅からバスに乗って10分ほど、府中刑務所と書かれたレンガ造りの門が見えてくる。晴見町の停留所で降り、案内に従い敷地内へと入る。刑務官ら職員が暮らす官舎を左手に見ながら歩くと右手に高さ5.5メートルの塀が現れる。刑務所の周囲1.8キロを囲っているという。バス通りに面した門から300メートルほど歩くと府中刑務所の正面入り口に到着した。 【画像を見る】「日本最大の刑務所」居室の中の様子は?
2月22日、日本記者クラブが主催する府中刑務所視察に参加した。これまで刑事施設に行ったのは大阪拘置所での林真須美死刑囚への面会取材や和歌山の女子刑務所にごく短時間行った経験はあるが、刑務所そのものを3時間あまり、広範囲に視察するのは初めてだ。名古屋刑務所での受刑者暴行事件などがあった中で、担当者から直接いまの刑務所の現状や課題を聞く貴重な機会となった。
日本最大規模の府中刑務所…『居室の扉や窓などを破壊』『トイレの汚物ぶちまける』受刑者も
府中刑務所は古くは1790年(寛政2年)に設置された石川島人足寄場をルーツに持ち、1924年(大正13年)、前年に起きた関東大震災の影響で府中に移転、建設された。東京ドーム5~6個分の敷地に収容定員2668人を誇る日本最大規模の刑務所である。取材時の受刑者は1594人でこのうち外国人が346人を占める。というのも府中刑務所は主に刑期10年未満の犯罪傾向が進んだ日本人受刑者と外国人受刑者を収容している。外国人はほぼ初めての入所だが、日本人はいわゆる累犯で平均の入所回数は5回、最多は25回の者もいるという。窃盗や覚醒剤などの薬物による罪での入所が7割を占め、約4割が暴力団関係者である。後述するが府中刑務所を含めいま刑務所には高齢化と矯正を含めた処遇の課題が重くのしかかっている。 所内を見学する前に、施設の概要のレクチャーを受けた。その中には対応が特に困難で緊急対応をとったという事例の動画もあった。居室の扉や窓などを椅子で破壊する者、トイレに溜めた汚物をぶちまける者、仲の良い受刑者と離されたことに怒り、作業所で高所に登って威嚇する者。テレビ番組などで見慣れた「規律の保たれた刑務所」とはまた違う一面を見せられ受刑者対応の難しさと同時に刑務官の仕事の厳しさに触れた。