《連載:茨城県内2024 10大ニュース》東海第2工期延長
■原電対応6市村批判 日本原子力発電(原電)は8月23日、東海第2原発(茨城県東海村白方)の再稼働に必要な安全対策工事の終了時期を2026年12月に延長すると発表した。延期は3回目。変更前の工期は9月だった。直前まで判断を示さなかった原電に、原発周辺自治体は「責任の大きさに自覚を」と批判した。 昨年6月、原発を津波から守る防潮堤の工事のうち、鋼製防護壁を取り付ける基礎部分で、柱の強度を向上させるためのコンクリートが複数箇所で充塡(じゅうてん)されていない不備が判明した。骨格となる鉄筋の変形も確認。工事は中断した。 これを受け、原電の村松衛社長は1月、安全対策工事の9月完了は「非常に厳しい状況」と言及。一方、9月までに工事を完了させる計画は「維持する」と強調した。 煮え切らない姿勢に、原発立地自治体の東海村と周辺5市は批判を強めた。6市村の首長でつくる原子力所在地域首長懇談会は5月、東海第2の現場を視察。直後の意見交換で、原電に安全対策工事の工期の質問を浴びせた。 座長の山田修東海村長は、工事再開に向けた原子力規制委員会の審査結果が出た段階で「ある程度の目安は示してほしい」と要望。後日の会見でも「できるだけ早く今後のスケジュールを示すべき」と重ねて強調した。 大井川和彦知事も7月の定例記者会見で「(9月完了が)あり得ないのは明らか」と指摘。工期を変えない原電の対応を「地元に対して不誠実」と厳しく批判した。 不備の対応として、原電は基礎にコンクリートや鉄筋を追加して強度不足を補う方針でいた。だが、調査報告を受けた原子力規制庁は「(不備の)全容把握ができていると見なすことはできない」と指摘。原電に基礎の造り直しを含めて検討するよう要請した。 追い込まれる形となった原電は8月、工期の延長とともに、基礎を「実質的に造り直す」方針を決定。不備を地中に残しながら基礎の構造として扱わず、代わりに鋼板や鉄骨による基礎内部の強化、セメントによる地盤改良、基礎幅の拡大を組み合わせて強度を確保する対策を打ち出した。 だが、原子力規制委員会は、この対策も「実現性の見通しが全く立っていない」と指摘。原電は具体的な設計や工事方法が定まり次第、再度説明することになり、先行きは不透明だ。 工期延長に当たり、大井川知事は「鋼製防護壁の不具合への対応を含め、安全性を高める工事を着実に実施し、県や市町村、県民に対し適時適切に情報提供し、信頼を得られるよう努めてほしい」とコメントし、原電にくぎを刺した。
茨城新聞社