「自分だけの手柄にするな!」企業のアトツギ経営者に大切な「勘所」とは 実力だけではうまくいかない事業承継
◆手柄は「あなたのおかげです」
――これまでのコンサルの中で、印象的な成功事例を教えてください。 力量が足りないことで先代社長の父親から認めてもらえず、何年も経営を任せてもらえない状況にあった後継者を、8カ月で世代交代させた事例がありました。 依頼を受けてスキル診断をしたところ、たしかに経営に必要な力が足りていませんでした。 そこで経営を基礎から教えたところ、半年ほどでみるみる力をつけて、会社の業績も向上したのです。 その頃、後継者本人が地道に開拓していた大口の商談が、まとまりそうだという報告が入りました。 そこで私が彼にアドバイスしたのは、「自分だけの手柄にするな!」でした。 ――やっと先代に認めてもらえる実績のように感じますが。 まさに、ここが後継者ならではの勘所です。 私は「その商談に、必ずお父さんを参加させてください」と伝え、商談がまとまった時は「お父さんのおかげでとれました」と感謝の意を伝えるよう説得しました。 彼は、私のアドバイスを忠実に実行しました。 するとどうなったか。 何年も息子にダメ出しばかりしてきた父親が、「あとはお前に任せる」と言ったのです。 こういう感情の機微は経営の教科書には載っていません。 しかし、事業承継では非常に重要なことです。 この勘所を知らずに、承継が滞る事例は数多くあります。 ――今後の活動について教えてください。 事業承継のコンサルの他、企業内の経営人材育成に力を入れています。 そして、起業したい人と後継者不在の企業をマッチングするサーチファンド等に人材を紹介する事業にも取り組んでいます。 近年、東証の上場企業もしくは上場予定の企業に「サクセッションプラン」の開示が求められるようになりました。 後継者育成が手つかずの上場企業も多いので、当社が後継者育成プランを策定し、トレーニングを行うという支援事業も進めています。
■プロフィール
ランナーズ株式会社 代表取締役 関根壮至 1972年、新潟県出身。成蹊大学工学卒、2023年3月法政大学専門職大学院MBA修士課程修了。電子機器製造業、モバイル通信キャリア、外資系大手ソフトウェア企業(米国Microsoft日本法人)を経て、同族が経営する企業の代表取締役になるも、2年半で解任される。2021年4月にランナーズ株式会社を設立し、自身の経営者経験を生かした後継者育成に取り組んでいる。