【現役デザイナーの眼:トヨタ・クラウン】策士なトヨタの『攻め』のデザイン
デザインテーマの引き出しの多さは世界一
カーデザイナーが日毎どのようなことを考えながらデザインしているかを感じていただくべく、今回、クラウン・シリーズのうち、特に印象的な『スポーツ』と『セダン』を中心に解説します。 【写真】4車種それぞれ異なる立体構成 画像はこちら (26枚) クラウン・シリーズのデザインが同業デザイナーから評価が高い理由、それは、日本車の常識や高級車のセオリーから外れたデザインが挑戦的だからです。 クラウンは現在4車種が発表されています。デザイン的に注目すべきは、この4車種でそれぞれ『狙いが異なる立体構成』をしている事です。 ここで言う立体構成とは、ドア面を含めた一般部の立体と、前後フェンダーとの立体の構成などですね。実はここが、デザイナーが最初に考えるところなのです。 クラウンは、セダンが最も常識的な構成をしています。 まず前後に貫く大きな基本立体があり、そこに前後フェンダーがくっついているという構成です。これはカーデザインの基本的な構成で、ドア面のリフレクションが揺れないのでしっかり芯が通った印象が出ます。 それに対し、クロスオーバーとスポーツは、大きく2つのボリュームを際立たせる狙いで構成されています。 前端からリアドアの半分付近までをひとつのボリューム、その後ろにもうひとつのボリュームという感じです。この効果としては、上面で見た時の『くびれ』が強く見えるので、よりダイナミックな印象になる事です。 また、エステートの狙いは、ドア面がほぼ見えなくなるくらい前後フェンダーのボリュームを強調する事です。 これはダイナミックな印象になる反面、ドア面のリフレクションがかなり揺れるので芯が通って見えづらいのですが、このクルマを見ると、これも正解かなと納得させる質感があります。 トヨタは、デザインの引き出しの多さが世界一だと思います。 クラウンだけでもこのように数多くの基本テーマにトライしているので、プロのデザイナーは、一般の方以上にトヨタ・デザインに尊敬の念を持っています。